KnoNの学び部屋

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高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学 その5(中編)

午後はゼミなので時間がキツいです。

巻いていきましょう。

 

引き続き

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学(菅原晃、2013)

第5章 国債について

の後半戦をやっていきます。

 

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学

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高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学

 

 

 続・第5章 国債について

日本が財政破綻することはありうるのか?

岩村充『貨幣の経済学』(2008)

国はいくら国債を発行しても倒産することはないと考えてよいのでしょうか。結論から言えば、そのとおりです。現代の管理通貨制の下では自国通貨建ての国債をいくら発行しても、それが理由で国が倒産することはありえません。

 

 この主張を検討するためには、「国債の発行過多による財政破綻債務不履行、デフォルト)」がどういう仕組みで引き起こされるかを考えなければならない。

 そもそも「財政破綻」とはどのような状態を指すのか、まずははっきりとさせておこう。

財政破綻国債を新規に発行しようとしたときに買い手かつかず(国債未達)、政府活動Gに対する支出が出来なくなること。

 このように考えると、債務不履行のシナリオは次のようになる。

 国債未達が起こる。

→ということは誰もこの国債を欲しがっていない。

国債価格が暴落する、あるいはしている(=国債の信用の暴落)。

国債の信用に裏付けられた、通貨の価値も暴落する。

→外国通貨建ての国債を償還しようとしたときに、レートの暴落により実質的な償還額が跳ね上がる。

→政府の現金支出の限界を超え、不渡りを出す(債務不履行)。

 ⇒「通貨の価値が暴落する」という部分がミソな気がする。それ(極端な円安)によって外国との取引が非常にしんどくなり、お金が足りなくなる、ということらしい。

 

 ここで財政破綻の根本になっている「国債価格の暴落(≒国債未達)」、これを引き起こす可能性があるのが「国債の発行過多」ということだ。

⇒基本的に世の中にたくさん流通しているものの価値は下がる。だから発行過多が勝ち暴落を引き起こすのは当然と言えば当然。

 

 しかし「日本はその国債の大半を国内向けに円建てで発行している(国内債)」ということがここで大きな意味を持ってくる。。

→そのため仮に国債と自国通貨(円)が暴落したとしても、「同じように(例えばドルに対して)安くなった円で、安くなった国債の償還をする」ということになる。

→実質的な国の負担は変わらない。

債務不履行は起こらない。

 

 これが『自国通貨建ての国債をいくら発行しても、それが理由で国が倒産することはありえません』という主張の根拠となる。

→ただし、国債の信用=円の為替レートが暴落していることに変わりはないので、外国との取引が非常に厳しくなるのは避けられない。

 

それでも「財政の抜本的改革」が必要なワケ

国債価格下落=金利上昇は、いずれ起こる」、実はその通りです。

……国債価格が高く保たれる、あるいは金利が低く保たれることの前提は「貯蓄超過」でした。その前提が崩れると、その後の現象も変わります。

 ここで久々にISバランス式に立ち返って考えてみる。

 

   (S-I)=(G-T)+(EX-IM) ;ISバランス式

  ⇒(貯蓄ー投資)=(政府活動ー税収)+(輸出ー輸入)

  ⇒民間貯蓄超過=政府の借金(公債)+外国との取引(貿易収支)

 

 現在はS-I>0、つまり貯蓄超過・カネ余りの状態なので、金利は低くなっている(お金が余っているので、簡単に借りられる)。

→しかし『日本人の貯蓄超過を占める企業と家計のうち、特に家計の貯蓄が減っている』という無視できない状況がある。

→多くの理由が考えられるが、「社会の高齢化による貯蓄の取り崩し」が主因とされる。

……これは経済政策どうこうで解決できる問題じゃない。このことを前提とした対策をしておく方が、確かに現実的。

 

 では、ISバランス式において貯蓄超過S-Iが失われてしまったらどういうことが起こるのか?

→これまでの実績から、公債G-T>0は前提とする。

→貯蓄超過S-Iがイコールゼロあるいはマイナスになると、等号を保つために右辺の貿易収支もマイナスになる(実際には既に貿易赤字状態なので、その幅が拡大する)。

→国内のお金が足りなくなるので外国から資本が流入してくる。*1

→貸す側にしていみれば、リスクの高い外国への貸し出しなので金利が高く設定される(借りる側も金利を高くしないと貸してもらえない)。

国債の新規発行も利率を高くしないと引き受けてもらえない。

国債未達による債務不履行へ……

 

 つまり、たびたび報道などでも説明されているように、「日本は国内からお金を借りている(国内資本で国債を賄っている)ので破綻しない」のであって、逆を言えば「国内のお金が不足して外国から資本が流入するようになれば破綻の可能性が高まる」というわけだ。

 

「プライマリー・バランス・ゼロ」を目指して

 前項で「貯蓄超過が失われた際の財政破綻の可能性」について検討した。

 しかしその根本となっている「社会の高齢化による貯蓄の取り崩し」は、もはや避けようもない現象である。……ではどうすれば対策をしうるのか?

→前提である「公債G-T>0」を解消する、という手段がある。

 

 そもそも「国債(≒公債)*2の発行を外国資本に頼らざるを得ない」ことがリスクの根本なので、そもそも国債を新規発行しなければ問題は起こらないのだ。

 

大竹文雄『ニッポン復活の10年』(日本経済新聞2010年1月9日)

日本の財政赤字が突出して大きいのは政府の規模が大きいからではなく、税収が余りにも少ないため。国際相場が暴落しないのは、消費税率などを国際標準に合わせてゆけば十分に税収があるという合意が市場関係者にあるからだ。

 

プライマリー・バランス基礎的財政収支)=政府会計において、国債発行などを除いた収入と、国債の償還・利払いの費用などを除いた支出の収支のこと。

 

 ここで考慮すべきなのは「国家の持続可能性」だ。

 個人の借金の場合は寿命という絶対的な返済期限があるが、原則として国家が死ぬことはない。

→借金の期限が来ても、単に返済するのではなく「借り換え」を続ければ良いのである。

→その場合に重要になってくるのが、「所得(税収)に対して債務残高が安定しているかどうか(=持続可能性があるか)」ということ。

→この持続可能性は「債務残高と名目GDPの比率」で図ることが出来る。

 ⇒名目GDPと税収は連動しているから。

 

 日本においては、この「債務残高/名目GDP比が上がり続けている」のが問題だ。

→この比率が現状維持なら、持続可能とみなすことができる。*3

→「プライマリー・バランス・ゼロ」の状態ならば比率が変わることはないのでそれを達成できる。

 

 『理論上、債務の償還がなく、かつ、新規の借入がなければ、債務残高の伸び率は名目金利に一致する

 ⇒債務残高は借金なので当然時間が経てば金利が付く。しかし長期債券でもっとも信用の高い国債金利は名目金利に一致する(?)。

→この2つが一致すれば比率は変わらず、持続可能性が保てる。

→しかし実際のところ、プライマリー・バランスは支出過多なので債務残高が増え続けていってしまっている。

 

……ここちょっとわからないところがあるな。「債務残高の伸び率=国債金利長期金利の利率」というのはわかるんだけど、そもそも「名目金利」ってなんだっけ?

 

竹森俊平『経済危機は9つの顔を持つ』(2009)

竹中平蔵 ……残高を増やさないようにして、その間に経済成長するから、2%成長で30何年したらGDPが2倍になるから半分になると。この手法しかありません。やっぱり成長をすることは、ものすごく重要なことだと思うんですよ。

 ……小泉政権時の経済政策の原理がこれか。理屈だけならすごくシンプルだと思う。正論ばっかりじゃ上手く行かないのが、政治に限らず世の中の常だけれど。

 

日本国という企業が、その金利以上に経済政策(GDPの成長)すれば、公債残高のGDP比は低下します。つまり、「経済成長率>金利」であれば、政府にとって「借金」は、見かけ上も増えないのです。

 

消費増税社会保障費 

 増税により財政赤字G-T>0を解消することで、日本の財政破綻のリスクを減らせることがわかった。

→しかし8%(あるいは10%)への消費増税だけではプライマリー・バランスはゼロにならない。

毎年の社会保障費の膨張が、政府予算の自然増を招いているから。

 

 結局のところ、日本で財政破綻は起きてしまうのだろうか……?

 

……というところで、時間が迫ってきているので今日もここまで。

というかなんだこれは、まさかの三部編となるなんて。長くても前後編で終わるはずだったのに。

それだけ重要な部分、しっかり確認しておきたいところだということなんでしょうね。

 

これから急いで昼食を済ませて、それから研究室に行ってきます。

 

それでは

 

KnoN(120min)

*1:経常収支+広義の資本収支=0

詳しくはその1の内容を参照のこと。

*2:厳密には国債(government bond)と公債(public debt)は異なるらしいが、大まかには国債⊂公債とみていいようだ。

参照 

公債 - Wikipedia

*3:今まで問題が起きたことがないから、らしい。

ということは条件が変われば(貯蓄超過マイナス転落とか)、プライマリー・バランス・ゼロでも危うい?