高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学 その5(後編)
落ち着いて記事を書くにはどうやら最低あと30分、できればあと1時間早起きしなければならないらしい……。
休みぼけした身体には辛いですが、少しずつ頑張ってみます。
……もうちょっと家が大学に近ければなー、やりやすいスケジュールが組めるのに。
引き続き
高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学(菅原晃、2013)
の
第5章 国債について
まさかの延長戦をやっていきます。
三部作、今日こそ完結。
続々・第5章 国債について
消費増税と社会保障費
増税により財政赤字G-T>0を解消することで、日本の財政破綻のリスクを減らせることがわかった。
→しかし8%(あるいは10%)への消費増税だけではプライマリー・バランスはゼロにならない。
→毎年の社会保障費の膨張が、政府予算の自然増を招いているから。
「社会保障費の膨張」自体についてはこの記事の内容を越えるので詳しくつっこまないが、ニュースなどで何度も取り上げられているので知らない人はいないだろう。
→つまり社会の高齢化には財政上2つの問題が含まれていることになる。
①生活を貯蓄の取り崩しに頼ることによる、貯蓄Sの減少
②医療費や年金支払額の増大による、政府活動Gの増加
→これらはともにISバランス式において貿易赤字を拡大させる方向に作用し、外国からの資本の流入を招く。それが財政不安に繋がるのは前回説明した通りである。
⇒となると日本を上回る高齢化が進んでいる国(韓国など)は財政上の懸念もより大きいということなんだろうか? 韓国経済が不安定でサムソンに頼り切り、みたいな話は良く聞くが、実際のところはどうなっているのだろう。
⇒そういえばそのサムソンも外国資本が株を持っていて「実質的に韓国の会社じゃない」みたいなことも聞いた覚えがあるな……。多国籍企業化。
結論として、プライマリー・バランス・ゼロの実現=政府の支出Gの削減と税収Tの増加、つまり「社会保障と税の一体改革」は不可避ということが確認された。
財政破綻を回避するたった2つの冴えたやり方
財政破綻を避けるための方法には、ここまで見てきたように①増税や歳出削減がありますが、もう一つ方法があります。それが②インフレです。
(強調は筆者)
→日本が財政破綻しない(できない)のは、国債のほとんどが「国内向け円建て」だから。
→仮に国債の引き受け手が現れなくなったとしても(国債未達)、日銀が「円札」を自分で刷って国債を購入すれば(日銀引き受け)、永遠に国債を発行し続けることが出来る。*1
→しかし発行銀行券の総量(マネタリーベース)が跳ね上がるので、インフレ・円安の加速は避けられない。
→さらにいうならば、極端なインフレ(為替市場における円安)は日本の円建ての資産の価値を大きく損ねるので、まともな政治家・政党・国民ならばそんな選択肢は選ばない。阻止限界点を越える前に①増税による資金調達という手段をとり、受け入れるハズ。
インフレ「税」?
インフレというのは、モノの値段が上がり、通貨価値が下がることでした。インフレは、実は増税と同じことで、別名「インフレ税」といわれることもあります。
⇒「インフレ税」という言い方は寡聞にして初めて知った。どういうことなのか確認していこう。
100円の預金を持っている人がいて、現時点で100円のカップめんがあるとする。今では100円を引き出して支払いに使えば、カップめんを買うことができる。
→翌年までに10%の物価上昇(インフレ)があった。カップめんの値段は110円に上がり、同じ100円の預金では0.91個相当しか買うことが出来ない。
→インフレ後では同じモノを買おうとしても10円余計に払わなければならない。これは消費税を10%にしたことと同じ、1年前の現金(資産)に対して10%課税したのと同じである。
……???よくわからない。自分の言葉で噛み砕いてみる。
「インフレが起きると、現時点での現金預金(資産)が目減りする」、これはわかる。
⇒これがイコール「資産への課税」? だとすると目減りした分の価値が政府にいったということか? でもどういう理屈で?
インフレが起きると通貨の価値が下がる、モノの価値は上がる。でも国債に書かれた額面価格、「償還しなければいけない金額」は変わらない。
→(政府収入が実際の価値ベースで入ってくるとするならば)政府収入の額面も増えているはずなので、相対的に国債償還の負担が下がる。
→実質的に「税収が増え、借金を返しやすくなっている」状況になっている?
……こういうことでいいんだろうか。
⇒なんとなくこれを「税」と表現することに抵抗があるのだけれど、そういうものらしい。
「日本は原理的に破産できない」
長くなってしまったが、いよいよ章全体を通したまとめに入る。
国債の未達が起こると、国債の信用に裏付けられた通貨の価値が暴落する。為替市場で極端な自国通貨安となり、外国への支払い、とくに国債の償還が出来なくなって債務不履行(デフォルト)を起こし、財政破綻に至る。
しかし日本にはこれが起こりえない事情がある。そのキーワードが「国内の貯蓄超過」である。
国債の発行を国内資本でほぼ全て賄えるため(円建て内国債)、仮に上記のような状態に陥っても「(外国通貨に対する)価値が暴落した円で、同じように価値が暴落した国債を償還する」となるので、支払えないという状況にならない。
ただし、現状の財政赤字や高齢化社会に伴う貯蓄の減少により外国資本の流入が進み、この事情がひっくり返る可能性もある。
また日本には財政再建をする余地が残されている点も、この面では強みである。
そもそも国債を発行しなければ国債未達は起こらない。年度ごとの政府支出Gと税収Tが均衡していれば(プライマリー・バランス・ゼロ)、国債を発行する必要はない。
このような状況を達成する方法は大きく2つある。①増税・歳出削減の財政改革、②インフレ誘導である。
①財政改革については、歳出削減はともかく増税の余地がまだ十分に残されている。
②インフレは政府の実質的な債務返済の負担を減らすものであるが、同時に円資産全体の価値も損ねる諸刃の剣であるといえる。
→そしてこの2つは「資産に対する課税」という意味で本質的には同じものである。
そして最終的にはハイパーインフレが起こることを甘受しつつも、「日銀の円増刷による直接引き受けにより、国債未達を回避する」という禁じ手も存在している。
以上のことより、
日本では(少なくとも現状では)国債未達時の債務不履行は起こらない、
起こったとしても緊急回避用の裏技(日銀引き受け)がある、
そもそもそんなことになる前に増税さえすれば財政を改善できる、
つまり
「日本で原理的に破産できない」
という結論が得られるのである。
【今回の三行まとめ】
- 財政破綻とは国債未達により引き起こされる事態である。
- 現在の日本では「貯蓄超過」や「増税の余地」などの点から、原理的に財政破綻は起こりえない。
- しかし慢性的な財政赤字や社会の高齢化によりこのメリットは失われる可能性が大きいため、財政改革は不可避である。
……3回にわたって長々とやった割には(というか長過ぎたせいで)、ずいぶんと端折ったまとめになってしまった。しかも「国債について」のはずなのにずっと「日本は財政破綻するか」について議論していた気がする。
できればちゃんと記事全体を読んでもらえるとありがたいです。
【今回の宿題】
……長かった。そして今日も時間がきているので手早く。
幾つか理解が不十分なところもありますが、「なぜ日本はこんなに借金があるのにやっていけているのか」という部分については人に説明できるくらいに整理できたのではないかと思います。
ラストの一章も頑張っていきましょう。
それでは
KnoN(100min)