知の編集工学 その4(後編)
今日も飽きずにペペロンチーノ。
ただし今回は一手間加えて野菜を入れました。
トマト、レタス、ピーマン、エリンギ。いわゆる「残り野菜のパスタ」ですね。
水気を切るのをいい加減にすませてしまったせいか、ちょっとぼんやりとした味になってしまいましたが概ね満足です。食後のコーヒーがうまい。
引き続き
知の編集工学 (朝日文庫)(松岡正剛、2001)
の
第四章 編集の冒険
の後半をやります。
編集とデザイン
編集に類似する概念として「デザイン」というものがある。
編集の手法を考えるにあたって、その違いをはっきりとさせておく。
エディティング
=主体と環境が相互に影響を与えながら変化を続ける「関係発見的」な営み。
→「運河化」で「流し打ち」
デザイン
=(主体も含めた)複数の要素の関係性のなかで、幾つもの条件を同時に満たしうるような「決まったカタチを探る」営み。
→「図形配置」で「打ち止め」
⇒最近、「ストーリーデザイン」の話はもちろんのこと「デザイン」というものの中身について考えることが多い。後輩と意見交換をしたりもする。その中で改めて自分の言葉で定義し直したのが上述の説明だが、ここに「デザインの限界」を見ることができる気がする。
⇒建築計画学のレポートの中で、「デザイナー(建築家を含む計画者)がユーザーの実際の利用の形態を完全に予測することはできない」「デザイナーにできることは、ユーザーが自由にアレンジできる状況を整えて、ディテールの追求はそれぞれにまかせる"新教養主義的アプローチ"しかないのではないだろうか?」というようなことを書いた事がある。
要するにここにあるのが「エディティング」と「デザイン」の違いであり、デザイナーがデザイナーという立場を取っている以上、建築の<編集>に関わるのは難しいのかもしれない。デザイナーという一歩引いた立場ではなく、内側に存在する主体の一人として関われれば理想的だが、現実には難しい。
エディティング・プロセスの8段階
エディティング・プロセスは基本的に8つの段階に分けられる。相互に組み合わさったり、繰り返したりしているが、原則は変わらない。
- 区別をする(distinction):情報単位の発生
→「注意の対象」の明確化 - 相互に指し示す(indication):情報の比較検討
→「何と比較されたのか」の明確化 - 方向をおこす(direction):情報的自他の系列化
→編集方針の決定 - 構えをとる(posture):解釈過程の呼び出し
→? - 見当をつける(conjecture):意味単位のネットワーク化
→文字通り - 適当と妥当(relevance):編集的対称性の発見
→「区別の基準」が浮かび上がる - 含意を導入する(metaphor):対称性の動揺と新しい文脈の獲得
→雑音的情報を加えることで奥行きが生まれる - 語り手を突出させる(evocation):自己編集性の発動へ
→情報群のなかに「自分」が混ざり新しい側面が生まれる
……「構え」だけよくわからない。いや、なんとなくわかるんだけど改めて書くことなのか、その必要があるなら自分が思っている以上の意味があるんじゃないかという気分になってもやもやする。説明もないし、気にし過ぎなのかもしれないけど。
編集工学の作業仮説
編集工学は「作業仮説」と呼ぶ活動の方針、方法のガイドラインを掲げている。
→「コンテンツ(内容)ではなく、「手続き」から編集の検討をつける」
- 記憶・思考・再生・記録の方法をつなぎ、コミュニケーションの流れやすさを作り、そこにシステムとフローを同時に構想する。
→コミュニケーションそのものの編集 - さまざまな現象・資料・動向に生きているメタプログラムおよびメタゲームを発見し(編集マトリックスの発見)、それを変化発展させデモンレートしつづける。
→素材の奥にある情報の母集団の作成 - 描線、文字、記号、図像、言語のしくみ、身体動向、科学体系、装置・機械・建築・都市、祭祀・儀式・芸能・スポーツなどが発しているものを情報と捉とらえ、その情報の多様な変容にかかわる。
→すでに表現された世界像の再編集 - 生物の情報活動および人間の脳神経系ならびに免疫システムなどにひそむ情報編集の方法を考察しつつ、その過程をコンピュータ・サイエンスなどの他の領域に応用する。
→「生きている情報」のメカニズムの工学的な応用 - 世界のコミュニケーションとメディアの歴史にかかわり、その展開がもたらしてきた特徴に着目し、これを新たな研究開発に寄与させる。
→歴史的な情報文化技術の現在的適用 - さまざまな知覚活動あるいは社会活動の場面をモデル化し、そこに入れ替え自在の編集的世界像を設定して、そこから生まれる自律的なエディトリアリティの発見と創造につとめる。
→モデル化とプロセスからの新たな自律的な創意の導出
情報文化技術の素材
(20以上の項目が列挙されているが省略。あとで補うかも)
<編集>の種類
編集工学では編集の方法を大きく2つに分けている。
<編纂>(compile)
=概念や事項を一対一に対応させる。データ(data、形式情報)を対象とする。収集、分類、選択、系統など。
<編集>(edit)
=対象を自由に要約、適合、類推する。カプタ(capta、意味情報)を対象とする。
→<編纂>を「静の技法」、<編集>を「動の技法」とまとめることもできる。
歴史上にも数多くの編集の技法が存在していた。
- 古代ギリシア・ローマ:ミメシス(模倣)、アナロギア(類推)、パロディア(諧謔)、トピカ(推論)などの哲学的方法論。
- 古代インド:ジャイナ教におけるダルマ、アダルマ、アガーサ、ポッガラ、ジヴァの5つの作用力。仏教における仏典の編集方法の多様性。
- 平安期日本:アワセ(合わせ)、カサネ(重ね)、キソヒ(競ひ)、カギリ(限り)、ウツロヒ(移ろひ)など。
→「主客を入れ替える」という発想が根底にある。
以上を踏まえ、編集工学でまとめられている64の編集技法を列挙すると次のようになる。
(今回は省略。あとで補うかも)
<編集>の方針をどう立てるか
世の中には数多くの編集の対象(素材)が氾濫しているが、どう料理するかに面白くもつまらなくもなる。素材をどう扱うかの方針を立てておく必要があるということだ。
→編集工学では、「何をアクシズ(軸)にして編集を進めるか」ということを編集方針といっている。
→内容よりも切り口をどうするかに着目する。
大まかには5つの編集方針(思考の切り口)を持つ。
- 時間的編集(order)
→「時間の不可逆性」に基づいた編集。年に一度の「祭りによる世界の再生」にそのエッセンスがあるとも。 - 場面的編集(configuration)
→ハイライトを抜き出す編集。 - 文脈的編集(eritoreality)
→様相(modality)、もっともらしさ(plausibility)、語り口(literacy)によって構成される編集。 - 律動的編集(rhythm)
→韻文や音楽など。多くは身体性をともなう編集。 - 手続き的編集(procedure)
→マニュアルやスペックの記述など。アルゴリズム的編集。
編集工学の手法の全体像についてはこのように概説できるが、問題はこのような方法によってどのように世界観や人間観の編集が進められるかである。
次回からはそこの部分について考え直して行くことになる。
【今回の三行まとめ】
- 文化というものの中には、何度も編集されたり操作されたりしても変わらず保存され続けるもの(<エディトリアリティ>)がある。
- 編集は「関係発見的」で、デザインは「最適解追求的」
- 編集工学は「何を考えるか」よりも「どのような切り口で考えるか」を重視する。
【今回の宿題】
- 「構え」の意味するところ
……あっさりというかなんというか、特に後半はマニュアル的項目の列挙が多かったんで改めてまとめ直すようなこともなかった。
記事を書いている途中で頭が痛くなってきたので、ところどころ端折ったりもしてしまいましたが今日はこの辺で。
少し休んで回復したら出かけてきましょう。
それでは。
KnoN(90min)