ストーリーメーカー その3
今日もペペロンチーノでお昼でした。
基本のパスタレシピ いちばんやさしい (今日から使えるシリーズ)
という本を参考にしているのですが、そういえば定番なのにナポリタン作ったことなかったなと思ったり。
ミートソースは準備がめんどくさそうなので、今度はこっちに挑戦してみましょうか。
引き続き
ストーリーメーカー 創作のための物語論 (アスキー新書 84)(大塚英志、2008)
の
第三章 英雄は誰を殺し大人になるのか
をやります。
ストーリーメーカー 創作のための物語論 (アスキー新書 84)
- 作者: 大塚英志
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2008/10/09
- メディア: 新書
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第三章 英雄は誰を殺し大人になるのか
英雄は父に恐れられ、流される
プロップ以前の注目すべき仕事として、オットー・ランクの『英雄誕生の神話』が挙げられる。
ランクはキリスト、モーゼ、ジークフリート、あるいはエディプスやアキレスなど様々な英雄譚を分析し、それには次のような共通の形式が見られることを指摘した。*1
- 英雄は高位の両親の子供(貴種)として生まれる。
- 誕生の前後には両親に様々な形の困難が伴う。
- 予言により父親が子供の誕生を恐れる。
- 子供は箱・籠などに入れられて水辺に捨てられる。
- 動物や身分の低い人々によって救われ、仮の親の元で育てられる。
- 大人になり、貴種であるという自分の出自を知る。
- 生みの父親に復讐する。
- 子供は認知され、最高の栄誉を受ける。
→これは民俗学者の折口信夫が「貴種流離譚」と読んだ物語の構造に近い。
ここで前回示したプロップの31の機能との対応を考えてみる。
(分かりやすさのため、機能の番号を括弧付き数字で表す)
- 4. 水辺に捨てられる → (8)加害あるいは欠如
⇒捨てられることにより「家族」「貴種としての裕福な生活」を失うことになる。「加害あるいは欠如」を『主人公』に与えるのは『敵対者』だとされているので、「父親」が『敵対者』だと位置づけられる。 - 5. 身分を偽って育てられる → (23)気づかれざる帰還
⇒『主人公』を排除した「父親」は『追跡者』であるとも言える。『追跡者』から身を隠すため、身分の低い人々の元で過ごすことになる。
- 6. 出自を知る →(9)派遣〜(11)出発
⇒出自が明らかになるきっかけを作ったものが『依頼者』となり、『主人公』を(おそらく出生の秘密を探るための)冒険に旅立たせる。 - 7. 父親への復讐 → (12)先立つ働きかけ〜(18)勝利
⇒ここがいわゆる「本編」になる。ランクの分析の中ではその過程は問題とせず、「復讐がなされる=『敵対者』としての父親に勝利する」という結果のみが重視される。 - 8. 認知と栄誉 → (27)認知、(31)結婚ないし即位
⇒主人公の出自が周囲に認められ、貴種としての地位を受け継いで即位する、あるいは(母親と?)結婚する。
⇒多少順番が前後している部分もあるが、充分に対応していると考えていいだろう。プロップの「31の機能」によって生成されるストーリーにおける、主人公の属性を特定したバリエーションだと言うことができる。
未完の物語の結末を予測する
ここで少し趣向を変え、この『英雄誕生の神話』が実際の創作にどのように応用されていたのかを見てみたい。題材とするのは昭和の小説家、中上健次の劇画原作としての作品『南回帰船』である。
中上健次はもとより「構造から物語を生成する」ことに関心を持っていたようで、ランクやプロップだけでなく、独自の考察による構造の抽出も行っていただろうが、ここでは『英雄誕生の神話』に則した形で分析するものとする。
……と、ここから『南回帰線』のあらすじを紹介し、明らかになっている部分の『英雄神話』との対応と、そこから演繹的に推測される「未完の結末」を紹介する予定だったのだが……やめた。
元の作品を読んでいない段階であらすじを書くのは正確性を欠き、引用も必要以上に長くなってしまいそうだからだ。拙い文章で粗っぽいダイジェストを紹介するよりは、直接テキストに当たってもらった方が分かりやすいだろう。「創作に役立つ物語論」という点では新しい情報もない。
というわけで、短いですけど今回はここまでとする。
【今回の三行まとめ】
- 古今東西の「英雄」に関する物語は、一定の共通の形式を持つ。
- プロップの「31の機能」に照らし合わせても、そのバリエーションの一つとして対応づけることが可能である。
- 物語の構造から、ストーリーの展開を演繹的に予想することができる。
【今回の宿題】
- 特になし
……尻切れとんぼな感じで終わらせちゃいましたが、実際ここで改めて取り上げる内容ではないと考え直したので割愛しました。話自体は面白いので興味がある方は是非テキストを読んでもらいたいと思います。
(『南回帰線』自体もトンガだったり清朝だったりマイク・タイソンだったり楊貴妃だったりして面白そう)
次はジョセフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』が底本。「スターウォーズ」の脚本にも影響を与えたと言われるもので、徐々に実践的なツールとして洗練されてきます。
それでは
KnoN(60min)