読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

KnoNの学び部屋

落ち着きのない大学院生が専攻に関係ない(むしろそっちのけで)学んだコトを記録しておく場所

ストーリーメーカー その5

◇ストーリーデザイン 3.『ストーリーメーカー』

ようやくペースが戻ってきた気がします。

今日はこれを書いてからお昼ご飯。

 

引き続き

ストーリーメーカー 創作のための物語論 (アスキー新書 84)

第五章 ハリウッド映画の物語論

をやります。

 

 

第五章 ハリウッド映画の物語論

物語論からシナリオ・マニュアルへ

 前回紹介したキャンベルは『千の顔をもつ英雄』のあと、ジョージ・ルーカスとの『スター・ウォーズ』に関する共同作業に触発される形でそれを発展させる。

 ユング派の元型論をキャラクター論として包摂した「ヒーローズ・ジャーニー」論物語論であり、(人間の自己実現とストーリーを重ね合わせるという面で)人生論でもあるような内容となっている。

 

 そしてこの「ヒーローズ・ジャーニー」論をハリウッド映画のシナリオ・マニュアルとして転用するための入門書としての仕事が、クリストファー・ボグラーによる『神話の法則』である。

 ボグラーは「ディベロップメントステージ」においてシナリオを練り上げる専門職の一人であり、学問としての物語論から、よりエンターテイメントにおける実践にふさわしいものに改良を加えている。

 

※テキストでは「ヒーローズ・ジャーニー」の実践への適用例として映画『バイオハザード』(2002)を検証しているが、この記事では触れない。気になる人はテキスト本文参照のこと。

 

ヒーローズ・ジャーニー

 「ヒーローズ・ジャーニー」論は次の3フェイズ・12ステップにより構成される。

→『千の顔を持つ英雄』とほぼ同じだが、主人公の成長としての「父殺し・母殺し」や「自己実現を通り越した悟り」の部分が削除または簡略化されている。エンタメとして掘り下げが不必要、ということだろう。

 

  1. 日常の世界
  2. 冒険への誘い
  3. 冒険への拒絶
  4. 賢者との出会い
  5. 第一関門突破

  6. 仲間、敵対者/テスト
  7. 最も危険な場所への接近
    (→7'. 複雑化)
  8. 最大の試練
  9. 報酬

  10. 帰路
  11. 再生
  12. 帰還

 

 プロップの31の機能、『千の顔を持つ英雄』との構造上の対比をまとめた図を併せて示す。

f:id:arcadia_1159:20140513121028j:plain

表:大塚英志著『ストーリーメーカー』より引用

 

 

 それぞれの項目について詳しく解説していく。

 

物語を駆動する3つの枠組

1. 日常の世界

 物語の基本は「日常から非日常へ行って帰ること」である。ここでは主人公の「日常」がどんなものであるかを説明し、同時にこれからやってくる「非日常=日常を脅かす危機」を示す

→主人公の「日常」を構成する家族や友人を登場させ、また解決すべき主人公の「内的な問題=欠如」を提示する。

 

2. 冒険への誘い

 「使者」や「依頼者」により主人公がもはや「日常」に留まれないことが告げられる(冒険への召命)。

→日常がやがて崩れさる不安定な状態にあることを示す「予兆」のエピソードが入ることもある。

 

3. 冒険への拒絶

 主人公が「出発」をためらったり、周囲の人間がそれを引き止めたりする。

→この物語論自体が「主人公の成長・自己実現」を重視する立場に立っており、「変化への「恐れ」に打ち勝つことが自己実現の第一歩」だという発想に基づく。

 

4. 賢者との出会い

 主人公を庇護するアイテム、後の冒険に役立つような情報を与えるキャラクターが登場する。

⇒そのさい「先立つ働きかけ」としてなんらかの試練を課すことがある。

 

5. 第一関門突破

 「第一関門=日常と非日常の境界」である。主人公は「境界」を越え、非日常の世界へと踏み出す。*1

→象徴として「境界守/門番」が登場することもある。

 

 ここまでが「出立/旅立ち」のフェイズに相当する。

 

6. 仲間、敵対者/テスト

 主人公と対峙する敵対者が示され、一方では仲間が固定し、それらの構図に従って主人公が試練(テスト)に直面する。

→物語のメインボリュームとなる部分だが、構造上の役割は大きくない。様々なトラブルを乗り越え、仲間を集めていき、最終決戦への準備を整える。

 

主人公の最終的な成長の根拠となることも忘れてはならない。クライマックスに対応する形で試練は与えられるべきだろう。

 

7. 最も危険な場所への接近

 最も危険な場所=「日常」から最も遠い場所=旅の目的地、である。主人公は6. の旅を乗り越え、目的地に到達する。

 

7'. 複雑化

 シナリオによってはここで状況が複雑化することがある。主人公たちの失敗によるものであったり、状況の悪化など。

 

⇒当初に示された冒険の枠組を更新する(「△△を達成するために、〇〇へ行き××を倒す」はずが「××を倒しても△△は達成されない」と明かされる)ことで読者に先の展開を読みづらくさせることを狙いとしている?

 

8. 最大の試練

 主人公は死の危機に瀕するほどの状況に陥る。「シャドウ(=主人公と正反対に自己実現した存在)」と対峙し、「向こう側での死」を体験しながらそれを乗り越える。

 

⇒『千の顔を持つ英雄』では「父親」が「シャドウ」として登場し、一体化することでそれを乗り越えている?*2

 

9. 報酬

 外的な目的としての報酬を入手する(霊薬、エリクシール)。

→主人公の内的な欠如は未だ回復されていない。

 

 ここまでが「成長/イニシエーション」のフェイズに相当。

 

10. 帰路

 「非日常」での目的を果たし「日常」へと戻り始める。

→「呪的逃亡」に対応し、主人公の帰還は妨害される。

 

11. 再生

 主人公が「日常」に戻る最後の局面。精神的に最大の苦しみを味わい、内的欠如の回復に向かう。

⇒精神的に苦しむのは「新しい自分」と「日常」を再統合するのが大変だから。「追跡者」による外的な困難だけでは不十分で、内的な困難により「一度死んで生まれ変わる」プロセスを決定づける。

 

12. 帰還

 主人公は内的欠如の回復を達成し、持ち帰った「報酬」により世界に安定がもたらされる(冒険の2つの成果)。

 

 この3つが「帰還/再統合」のフェイズ。

 

⇒「ヒーローズ・ジャーニー」では次の3つの枠組が物語を駆動させている。

  • 「行って帰る」プロセス →成長のための通過儀礼のメタファー
  • 内的欠如の「欠落と回復」のプロセス →自信の獲得
  • 外的不安の「欠落と回復」のプロセス →他者による承認

 

(※テキスト本文の冒頭では現代社会における物語論の位置づけなどの考察もあったが、本稿では割愛する)

 

【今回の三行まとめ】

  • ボグラーはキャンベルの「ヒーローズ・ジャーニー」論をマニュアルとして整理し、3フェイズ12ステップの構造としてまとめた。
  • その構造は「成長のための通過儀礼」「内面的自信の獲得」「他者による承認の獲得」という3つの枠組にまとめられる。
  • 広い意味での「主人公の成長」を描くこの構造はハリウッドで広く受け入れられ、多くのバリエーション(実践)を生み出している。

 

【今回の宿題】

  • 特になし。

 

……これまでは比較的「学問としての物語論」からの分析であったが、今回は完全に「使うためのマニュアル」となっている。ますますわかりやすい。そして3つの物語論の対比もテキストの中でやっているので、筆者が書き加えることが特にない。

 まあ、すでに読んだ内容の整理が目的なのでこんなものでいいでしょうか。

 

 あと一回、今度はもう少し頭を使って、今回割愛したような「物語論について語る意義」みたいなことをまとめて〆にしようと予定しています。

 

それでは

 

KnoN(100min)

 

神話の法則 夢を語る技術

神話の法則 夢を語る技術

 
物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

 

 

*1:「第一関門」という言い方は分かりにくい気がするが、おそらく「非日常への第一歩を踏み出す」ことを重視しているためにこのような表現になったのだろう。

新しいことを始めることが最初のハードル。

*2:となると表での対応は誤っていることになる。

「父親との一体化」という「最大の試練」を乗り越えた結果として「神格化」するのだろう。