KnoNの学び部屋

大学に8年在籍した後無事に就職した会社員が何かやるところ。

ストーリーデザイン研究会 その1

昨日はストーリーデザイン研究会(SDS)*1の会合があったので、忘れないうちにそのまとめです。

 

加えて今日中に目を通しておきたい本が一冊あるので、バルトの続きは明後日の予定になりますね。

 

なんだかこのシリーズはのびのびになることが多い気がするなー。

 

 

 

テーマ①:『ストーリーメーカー』を読む

 初回の活動は先日までここでも連載していた

ストーリーメーカー 創作のための物語論 (アスキー新書 84)大塚英志、2008)

を読み、内容理解を確認することでした。

 

 分析の学問としての物語論を創作への応用に役立てようという本書を読むことで、「ストーリーデザイン」がどういう話をする領域なのか、メンバー間で共通認識を持つことが目的です。

 

 「内容理解を確認する」としましたが、この本自体が「使いやすい」ようにわかりやすく書かれているので、特にそういう面で議論になるところはありませんでした。

 重箱の隅をつつくような話をしてましたが(笑)、「物語」に関するお互いの考え方を述べあったのは今度にも繋がるのではないかと思います・

 

 具体的なテキストの内容はこのあたりを参考にしてもらうとして、研究会の中で話題になったトピックをごく簡単に。

 

◯プロップの「31の機能」について

  • 4つの命題のひとつ「機能の継起順序は、常に同一である」は正しいのか?
    →31の機能の中で、順序入れ替え可能なものがないか考える。
    →直接的な因果関係があるためひっくり返せないペアを除いていくと、やはり入れ替え可能なものはほぼなさそう。
    →「18. 勝利と19. 回復は入れ替え可能なのではないか」という疑問が出され、ハリー・ポッターの例も出されたが、「回復」をどう定義するかによるのではないかということで嫌疑不十分。
    この命題は真、という結論に。

 

◯ランクの「英雄誕生の神話」について

  • 例としてイエス・キリストにまつわるエピソード」への適用を考える。
    →「父親=ヘロデ王、あるいはユダヤ社会全体」と考えると、「誕生時の困難=ヘロデ王による幼児虐殺」、「水辺に捨てられる→生地からの逃避行」、「父親への復讐=布教活動」、「最高の栄誉=受難」などの対応が考えられる。*2
    ⇒充分に成立している。

  • そもそもイエス・キリストのエピソード自体、英雄としての正当化・箔付けのために「物語化」されたものなのでは?
    →それは充分に考えられる。しかしその真偽を確かめることはここですることではない。むしろ「英雄誕生の神話」の構造としての有用性を示している。

  • ではバリエーションとして、ブッダの場合はどうだろうか。
    →基本的な知識が不足しているので検討できず。諦める。

 

◯キャンベルの「千の顔を持つ英雄」について

  • 「神格化」されたはずの主人公が、それでも帰還のプロセスの中では「逃亡」するはめになる(=最終的に「負けて」終わる)のは示唆的。
    →これ以上話が広がらず……。

 

◯ボグラーの「ヒーローズ・ジャーニー」について

  • プロップの31の機能で重視されていた、「加害あるいは欠如」が明文化されて取り込まれていない。これは両者の分類を比較する上でのポイントになるのでは?
    →いろいろと議論がなされたが、筆者にはイマイチ論点がわからなかった……。

 

 このような感じになりました。

 深化させるような内容ではなりませんでしたが、いろいろと思うところを述べあって複数の見方から理解を確認できたのではないかと思います。

 

テーマ②:「世界を楽しませる」ためのストーリーデザイン

 2つ目のテーマとして、メンバーの一人が関心を持っていることについて意見交換をしました。

 

 『ストーリーメーカー』で扱っている話の筋は、「主人公の成長」を話の中心とすることを前提としている。登場人物の内面の話が重要なのであり、外的要因はそれを演出するものに過ぎない。

→逆に、自分の考えた世界観を読者に伝え、楽しんでもらうことを第一にしたストーリーの作り方の方法論というものはないだろうか?

 というものです。

 

 例として

  • ミステリのように、謎を解くことを物語のメインテーマとする。
  • ホラーのように、「雰囲気」を味あわせる。
  • ドキュメンタリーのように、淡々と出来事を記述していく。
  • 主人公(視点人物)を探索者として世界の中で行動させる。

などが可能性を感じるものとしてあがりました。

 

 変わったところでは

  • TRPGは製作者は世界観と基本的なルールのみを呈示して、プレイヤーがその世界観を楽しみながら自分たちでストーリーを作っていく。
  • ある同人小説では、「日本語話者の主人公が、(おそらく異世界の)まったく別の系統を持つ言語の世界に放り込まれる」という設定を採用している。

などの意見もありました。

 

 まだまだ「意見交換」といったレベルですが、今後も深めていきたいトピックではあります。

 

次回の活動内容:物語分析の実践

 以上2つのテーマを踏まえ、次回の内容は「物語分析の実践」に決まりました。 

 『ストーリーメーカー』にしても、理論をこねくり回すだけではなくやはり実際に適用してこそ。「世界を楽しませるためのストーリーデザイン」にしても、「主人公の成長」をメインとしていない話は具体的にどんなものがあるか。いずれも実例を通して考えてみようという趣旨です。

  • 好きな「ストーリー性のある作品」(小説、マンガ、アニメ、ゲーム、媒体問わず)を取りあげる。
  • あらすじを簡単にまとめる。
  • ストーリーを構造的に分析する。
  • それぞれを比較してみる。

というような流れでやりたいと考えています。

 

 次の活動は6月の下旬になると思いますが、どういう作品が出てくるか楽しみです。

 

それでは

 

KnoN(70min)

*1:Story Design Studies (or Seminar)でSDS。

代案が出なかったので(仮)が取れました。

そのうちしれっと変わっているかもしれないけど。

*2:筆者はキリスト教の専門家ではないので、用語の間違いなどあれば優しく指摘して頂けると助かります。