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KnoNの学び部屋

落ち着きのない大学院生が専攻に関係ない(むしろそっちのけで)学んだコトを記録しておく場所

演劇入門 前編

うっかり寝過ごして連続更新止まっちゃった……。

4月2日のブログ開設以来、一応毎日更新していたのでちょっともったいない気もします。

でもどうせ書くこともなかったし、切り替えていきましょう。

 

気分転換で新書を読んでみようと思います。

演劇入門 (講談社現代新書)平田オリザ、1998)

 

以前に読んでいた

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書)

からの展開ですね。

 

「観る」ものとしての演劇ではなく、「表現する」手段としての演劇入門。

広い意味での「発信のコミュニケーション論」のような内容です。 

 

あっさりめに前後編くらいで。

 

演劇入門 (講談社現代新書)

演劇入門 (講談社現代新書)

 

 

 第一章 「演劇のリアル」と「現実のリアル」

◯「戯曲を書く」という作業は、一つの架空世界を構築するという行為である。

二つの世界の「リアル」が重なるところを求めていく。

 ここで演劇と現実の「リアル」には三つの問題点がある。

  1. 現実世界の「リアル」と、演劇世界の「リアル」が、一見異なるもののように見えるのはどうしてか?
    →「イメージのプロセス」を経ることで演劇が「リアル」に近づく。
  2. 演劇世界の「リアル」とは何であり、どのように獲得されるのか?
  3. 人間を「リアル」から遠ざけるものは何か?

 これらの問題点の考察を通じ、「リアル」の感覚の個人差を認めながら、その感覚の発生のメカニズムについて考えていく。

 

◯戯曲には大きく二つの技術的な制約がある。

  • 戯曲では「舞台に登場している人物」しか話さない*1
  • 戯曲は「話し言葉を書く」ことで作られる。

→「話し言葉(だけ)で自分の伝えたいことを表現する」ことが、慣れていない人には意外と難しい。

 

◯「伝えたいことの消失」が現代演劇の特徴である。

→近代演劇と現代演劇の違いは「テーマが先か、表現が先か」と言い表すことが出来る。

  • 近代演劇
    →作り手のテーマ・主張・イデオロギーを表現に投影し、観客はそれを受け止める。作者の個人的な思想を、芸術を通して多数のものに伝えていく。
  • 現代演劇
    →テーマがなくなり、表現への欲求が先行する。「自分が知覚している世界」を示すことが目標となる。
    →統一的なイデオロギーの失効や、芸術の社会的役割の変化を反映。

 

 

第二章 戯曲を書く前に ー場所・背景・問題

 実際に戯曲を書き始める前に、はっきりさせておかなければならないポイントが三つある。

場所・背景・問題

 

◯「戯曲を書きやすい空間設定」として物語の舞台となる場所を設定する。

→「内部」の人間だけの(自然な)会話からは、観客の知りたい情報が出てこない。

→「内部」の人間と、「外部」の人間が自然に入り交じり、言葉を交わすような場所を選ばなければならない。

セミパブリックな空間

 

◯その場所においてさらに「外部」の人間を参加させやすい背景(状況)を設定する。

→プライベート/パブリックな空間においても、特殊な状況に置くことによって対話を誘発することが出来る。

セミパブリックな時間

→状況の設定には「リアリティと情報のバランス」に留意すること。

 

◯「内部」の人間が抱える、解決すべき問題を設定する。

→「観客の想像力を梃子にして展開する」という戯曲の表現特性上、その問題は劇の冒頭で分かりやすく提示しなければならない。

観客の想像力を方向付けする

→極言すれば、戯曲とは「降り掛かる問題に対し右往左往する登場人物たちの人間模様を描く」ものだと言える。

 

 

第三章 対話を生むために ー登場人物・プロット・エピソード・台詞

 

◯登場人物たちは「持っている情報の幅」という意味でバラエティに富む構成になっていなければならない。

→登場人物には「内部」「外部」「その中間」の三種類がある。

 問題に直面する「内部」の人に対し、「外部」性を持つ登場人物たちが刺激を与える(=対話を通じ、持っている情報を開示する)ことで、ストーリーが展開されていく。

  • 内部:問題に直面する人々。
  • 外部:「内部」に対し、変化を誘発する人々。
  • 中間:内外を繋ぐ人々。程度によって両面的な振る舞いをする。

情報のレベルに差がある人物たちを重ねることで、劇中の対話を通して観客に必要な内容を届けることが出来る。

 

◯「人の出入り」と「情報の出入り」を管理するものとしてプロットを組み上げる。

→特に「人の出入り」をイメージしやすくするために、大まかな舞台配置は考えておいた方が良い。

 ただし「出入りの理由」までこの段階で考える必要はない。

 

シーン毎の話題となるエピソードを考える。

→ストーリー面で伝えたい内容からは出来るだけ遠く、それでいて全体のテイストからは離れすぎない話のネタを当てていく。

→モチーフ(場面・背景・問題)から遠い順にエピソードを並べ、イメージと会話の連鎖の中で徐々にストーリーの核心に迫っていく

→ここでの「ネタ」を用意するために取材や情報収集が大切。

 

◯ここまでの作業から自分の中の「テーマ」を整理しながら台詞を書き始める。

→与えられたものとしてではなく、自分の「表現したいことの本質」としてのテーマを探っていく。

 

◯今の演劇は「対話」によって成立する。

→話し言葉にも(主に文法諸規則からの距離という面で)様々な種類がある。

 戯曲はその中の「対話(dialogue)」を特に重視しながらも、それらをバランスよく織り交ぜながら構成される。

種類相手場所(例)冗長度公←→私
談話(speech) 特定多数の他人 講演 公的
対論(debate) 特定少数の知人 会議室  
教授(teaching) 特定少数の知人 教室  
対話(dialogue) 不特定少数の他人 ロビー  
挨拶(greeting) 不定 公園  
会話(conversation) 親しい知人 居間  
反応(reflection) なし 台所 -  
独り言(monologue) なし 自室 私的

 

 ただし日本語と「対話」は相性が悪い。日本文化には「対話」の前提となる他者の存在が希薄であるから。

→その中で「対話」を成立させること、成立しうるシチュエーションを用意することに作者の創意工夫が要求される。

 

 

【今回の三行まとめ】

  • 「戯曲を書く」とは、演劇と現実の「リアル」に自覚的になり、その発生メカニズムを解き明かすことを考えながら、それらが重なるところを探っていく試みである。
  • 演劇は登場人物たちの「対話」によって進行し、そこから観客に情報を提示することで観客と「対話」する営みである。そのためには「対話」が自然に成立するセミパブリックな場所・時間・問題を考えなければならない。
  •  戯曲は「話し言葉」によって表現されるが、それにも多くの種類がある。その中の「対話」が演劇で用いられる話し言葉の中心である。

 

【今回の宿題】

  • 「演劇」と「戯曲」の違い

 

……「演劇は話し言葉の表現である」というのは目から鱗だった。

 確かに「話し言葉を書く」という面では小説でもバランスの難しさを感じる。演劇では現在進行形で役者が発話する分、その「自然さ・リアルさ」にはより繊細にならなければならないのかもしれない。

 

 ちなみに私の演劇体験は2回です。サークルの友人が掛け持ちでやっているのを見に行ったのと、詳しい事情は忘れたけど別の演劇サークルがやってるのを見に行ったので。

 もうすぐシーズンなんで、何年か振り行ってみるのもいいかもしれませんね。

 ちなみに平田オリザ主宰の劇団「青年団」の次回公演は10月下旬ごろらしいです。

『暗愚小傳』|公演案内|青年団公式ホームページ

 

それでは

 

KnoN(120min)

 

平田オリザの仕事〈2〉都市に祝祭はいらない

平田オリザの仕事〈2〉都市に祝祭はいらない

 

 

 

*1:ナレーターとかいなかったっけ?
それは著者の考える「リアル」ではないということか