演劇入門 後編
今月入ってから体調イマイチ。
寒くなったのに布団が夏仕様で眠りの質が悪いのが原因なんじゃないかと思っているが、まあ色々心当たりがありすぎて。
とりあえず暖かい布団を出しました。
一日空きましたが、引き続き
演劇入門 (講談社現代新書)(平田オリザ、1998)
の後編をやります。
第四章 俳優は考えるコマである ー戯曲・演出・俳優の関係
◯俳優の評価基準として、著者は「コンテクスト」をキーワードに次の3点を考えている。
- コンテクストを自在に広げられる
- 劇作家に近いコンテクストを持っている
- 非常に不思議なコンテクストを持っている
→「コンテクスト」は個人が持っている言語の範囲、仕草の内容のこと。
→コミュニケーションの本質はこの「コンテクストの摺り合わせ」であり、そこから共通理解を生み出すことである。
→俳優は「他人の言葉を自分の言葉のように話す」仕事であり、作家にあわせて自己のコンテクストを調整することが求められる。
◯俳優の「演技以前の仕事」として次のようなものが要求される。
- 自分のコンテクストの範囲を認識すること
- 目標とするコンテクストの範囲の広さをある程度、明確にすること
- 目標とするコンテクストの広がり(=演劇の「様式」)に向けて方法論を吟味し、トレーニングを積むこと
◯「演ずる」とは、自分のコンテクストと演じる対象のコンテクストを摺り合わせることである
→俳優としての「自分」と役柄としての「登場人物」のコンテクスト(=演出家の持つコンテクスト)を協調させる
→俳優と作家/演出家の間の権力のヒエラルキーを考慮しながら、コンテクストの共通理解を作り上げていく。
第五章 「参加する演劇」に向かって
◯前回掲げた「リアルについての三つの問い」は、全て「観客とのコンテクストの摺り合わせ」という課題の中に潜んでいると考えられる。
→「観る—観られる」の固定化された関係が、現実と演劇のリアルに差異を生む。
→表現者と鑑賞者の間で「内的対話」が行われ、非言語のそのコミュニケーションによりコンテクストの共有が行われる。
→「多様な観客に対して、多様なコンテクストの共有の可能性を開きつつ、自らのコンテクストを開示していくこと。ここに現代演劇において戯曲を書くことの最大の困難がある」
◯学校や社会では、コンテクストの「摺り合わせ・共有」ではなく「強要」が行われている。
→特定のコンテクストをそのまま「獲得」することが求められ、受け手側の個性は考量されない。
⇒規律型権力におけるディシプリン
◯コンテクストを共有する・表現する手段として「演劇」を広く開かれたしたものにしていくことによって、新しい共同体を形成する「参加する演劇」の可能性が生まれる。
→演劇には三つの「対話」が含まれている。それらを扱う中でより一般的なコミュニケーションが期待される。
- 演劇作品内での、役柄同士の対話
- 演劇集団内での、劇作家・演出家・俳優といった個々人の対話
- 劇場での、表現する側と見る側との対話(内的対話)
【今回の三行二行まとめ】
- 演劇に限らず、コミュニケーションの本質は「コンテクストの摺り合わせ・共有」にある。
- 演劇の中で行われる「三つの対話」が共同体の中の相互理解において大きな役割を果たしうる。
【今回の宿題】
- 特になし
……かなり端折った感じになってしまった。詳しいことはテキストをご参照ください。
「コンテクストの共有」「内的対話」など、結構自分が考えていたことに近いことに言及されていて「我が意を得たり」という感じ。
またルーツが小説なので「作るー受け取る」という二者間の関係ばかり考えていましたが、そこに「演じる」俳優という要素が入ってくる考察が新鮮でした。
それでは
KnoN(60min)