誰のためのデザイン? その2
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
引き続き
誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)(D.A.ノーマン、1990[1988])
の
第3章 頭の中の知識と外界にある知識
をやります。
短いけれど更新頻度優先で。
誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)
- 作者: ドナルド・A.ノーマン,D.A.ノーマン,野島久雄
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 1990/02
- メディア: 単行本
- 購入: 37人 クリック: 945回
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第3章 頭の中の知識と外界にある知識
◯人は次のような理由により、不正確な知識からでも正確な行動をとることができる。
不完全な知識からで正確な行動をとることができる4つの理由
人が何らかの行動を行おうと思う時、その手順全てが完全に(内的知識として)記憶されているわけではない。内的知識に加え、外界にある様々な手がかりとの相互作用から目的の行動を「再構成」していると考えるのが適切である。
例えば中世ヨーロッパの吟遊詩人たちは何千行にも及ぶ叙事詩を諳んじることができた。しかしこれはその全てを完全に暗記していたわけではなく、「(詩としての)韻」「テーマ」「話の筋」「物語の構造」などを制約条件(=外的な知識)としながら、細部のアドリブを交えながらその都度生み出すことによって「再生」していっていたのである。
→行動を規定するための要所(決まり文句;formula)を押さえることによって、厳密には異なる行動が「同じもの」として十分な機能を果たす。
◯人は身の回りの環境を構造化することにより外部に情報(知識)を記録し、そこから取り出すことができるようになる。
一見乱雑に見える部屋の中でも、その主にとっては「衣類はここ」「仕事の資料はこの辺り」というように系統立てて構造化されている。「右端のキャビネットの上から3段目の引き出し」ではなく、「部屋のこの辺り」という大雑把な(内的)知識だけでも目的のものを探し出すには十分となる。
不特定多数が共通に使えるような「環境の構造」を作るためには、その対応づけが直感にそった「自然なデザイン」でなければならない。
◯人の頭の中の知識(内的情報)は主に次の3種類にカテゴリ分けされる。
内的情報の主な種類
- 恣意的なものに関する記憶:宣言的な知識
- 意味のある関係に関する記憶:恣意的な知識を結びつけて「解釈」する
- 説明による記憶:「概念モデル」にあてはめて理解する
「恣意的な〜」は"純"知識と言ってよいものかもしれない。「AはBである」という公理的な命題に関する知識であり、任意に設定され、「そういうもの」として覚えることになる。
「意味のある関係〜」はそういった恣意的な知識の間になんらかの関係を見出すことである。それらに本来的に関係かあるかは必要でなく、とにかく頭の中で結びつけばよい。
「説明による記憶」はそれを一歩進め、なんらかの形で構築したモデルにそって理解しようとする。「仕組み」として理解しているので、新しい場面においても何が起こるのか(自分なりに)推測できるという利点を持つ。
◯外的知識と内的知識はそれぞれにメリットがあり、トレードオフの関係にある。
- 外的知識:覚えておく必要はないが、外界にある手がかりを「解釈」したり、複数の手がかりが相互干渉しないように巧みにデザインする手間が必要。
- 内的知識:デザインや「解釈」の手間はいらず、ただ「思い出す」だけでよいが、覚えるための努力や工夫が必要であったり、使いたい時に「ど忘れする」というリスクがある。
→「検索可能性」「学習の手間」「利用の効率」「初めての場面での使いやすさ」「(見た目の)美しさ」などの項目においてそれぞれメリット/デメリットがあり、うまく使い分けなければならない。
⇒個人的にはできる限り「外的知識」の比重を増やし、ユーザーの「内的知識を蓄える」手間を減らしたいと考える。
【今回の宿題】
- 「環境の構造化」についての理解が不十分な気がする。
……書き漏らしている要素も多いが、少ないポイントに絞ってまとめるとこんな感じになると思う。
「内的記憶の種類」のところで例をあげながら説明したかったが、上手い具合にできなかったのでばっさりカットした。要望があれば頑張って補足します。
こういう風に「誰かに説明する」ためにまとめると、自分のわかっているところ・わかっていないところが浮き彫りにされて勉強している気分になる。
それでは
KnoN
- 作者: ドナルド・A.ノーマン,岡本明,安村通晃,伊賀聡一郎,上野晶子
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2004/10/15
- メディア: 単行本
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*1:この章における「知識」と「情報」は厳密に区別されているわけではなく、内部/外部に対するコロケーションの良さで使い分けられていると思われる。