12月の読書記録
こちらを旧年中にやっておくべきだった気がしなくもない。
11月ほどは多くないが記録として。
テーマ分けするほど量がないので全部まとめてやりましょう。
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公共性 (思考のフロンティア)(齋藤純一、2000)
先月読んだ『RePUBLIC』『パブリック空間の本』で共に言及されおり、分量も少なめだったので買ってみた。……が、正直あまり面白くなかった。
そもそもが社会学における「公共」概念を主題とするものであり、特にハンナ・アーレントの思想についてある程度知っていないと何を議論の問題にしているのがわからない。半分も理解できずに何度も挫折しかけたが、たかだか100数ページしかない本を投げ出すのも癪で意地になって読み切った。
順番を間違えなければよくまとまった良い本らしい。 -
物語の哲学 (岩波現代文庫)(野家啓一、2005)
「物語」という語に惹かれ、ストーリーデザイン、あるいはナラティヴ・アプローチの参考になるかと思い購入した。結果としては期待していた内容とは異なっていたのだが、面白かった。
著者の専門は科学哲学であり、この本では特に歴史哲学について論じている。その主張は「歴史は物語られることによって歴史たりうる」というようなことである。
一般に自明視されている「線状の歴史観(=時間は等速に一直線に流れるものであり、その線分上の点として各種歴史上の事件が存在する)」に対し、その(装われた)客観性の原理的な不可能性*1を指摘し、「積層された歴史観(=その時々の出来事は一枚のガラスの中に描かれ、それらを重ね合わせて見返したときに出来事の濃淡やその移り変わりが見えてくる)」を提唱している。
あらゆる出来事は、後世の人間がそれを「物語る」ことによって結びつけることによって初めて「歴史」の中に位置付けられる、ということが「物語(り)の哲学」*2の由来。
読み終わってから結構たっているので細部は怪しいが、だいたいこんな感じのはず。 -
コーチングの基本 この1冊ですべてわかる(コーチ・エイ、2014[2009])
Kindle年末年始セールでつい購入してしまった本その1。
前々から「人のポテンシャルを引き出す技術」*3としてのコーチングに興味を持っていたのだが、まさに入門にふさわしい内容だった。
そのうち単発記事にしようと思っているので内容は省略。
単行本約1700円が550円になっているのでKindle読める方にはオススメ*4。 -
マンガでわかる男が知るべき女のカラダ 本当に正しい知識で女性を理解する (サイエンス・アイ新書)(河野美香、2014[2012])
Kindle年末年始セールでつい購入してしまった本その2。
数年前からこんな感じの本が増えている気がする。1冊くらい読んでおくのもいいか、とか考えてポチったはず(実はあんまり覚えていない)。
女性ホルモンは想像以上に身体生理に影響を与えているらしい。女の人は大変だ。
原本は(おそらく)見開き1ページ1トピックを扱い、左に文章、右にマンガが書かれている。KindlePWの環境では基本片面ずつの表示なのでリズムがあまり良くないが、読めないこともない。ただフルカラーも売りらしいのでタブレットとかで読んだ方がいいかもしれない。
姫さまがかわいかった。 -
伝わっているか? 宣伝会議(小西利行、2014)
買ったのはだいぶ前*5。「2014年に読み始めた本は2014年中に読み終わろう」と思って再び手に取った。
通底するテーマとしては「コーチング」と同じ。なぞの「イルカ」が潰れかけたスナックに現れ、そこの店長「ももこ」や客たちの悩みを「伝わる」をキーワードに解決していく仕立てになっている。
問題は「スナックやゲイバーに再び客を呼び寄せたい」や「過疎の村の町おこしをなんとかしたい」、「部下に慕われる部長になるには?」など身近で実践的なものばかり。現在進行形の関心の対象はそれを一段抽象化した「原理」だが、結果として求めているのはこう言った知恵が一般に活用されるようになることだ。だからある意味自分が求めている世界が描かれているとも言える。
理屈ばかりをこねくり回すのではなく、役立ててもらえるような知見を積み重ねることが大事なのだという、テーマそのものとはちょっと違った教訓が2014年に最後に読んだ本からは得られたのであった。
……まあ、こんなところで。
「誰のためのデザイン?」は地道にやってます。このままだと正月休み中には終わらないけど、他にもやりたいことが多い……。
それでは
KnoN
マンガでわかる男が知るべき女のカラダ 本当に正しい知識で女性を理解する (サイエンス・アイ新書)
- 作者: 河野美香
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ株式会社
- 発売日: 2014/09/05
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*1:よーするに観測する自分自身(あるいは歴史学者)が歴史の中にその身を置いている以上、完全な客観性は成立しない、ということ。
*2:名詞としての「物語」ではなく動詞としての「物語り」がそういう意味で本来のタイトルに相応しかったが、その違いを意識する前にタイトルをつけてしまったので変えられなかった、とのこと。
*3:「ポテンシャルを引き出す」「ボトルネックを解消して色々なものの流れを良くする」というのは一貫した自分のポリシー。
建築空間の使いやすさの向上や、テーマを読者に伝える技術としてのストーリーデザイン、コミュニケーション原理の追究といったことは全てその実践として位置付けられる。
*4:専用の端末を持っていなくても、PCやスマートフォンのアプリ経由で読むことができる。ただしMac版は放置されているようなので避けたほうが吉。
*5:過去記事を見ると9月ごろみたい。