KnoNの学び部屋

大学に8年在籍した後無事に就職した会社員が何かやるところ。

誰のためのデザイン? その3

正月休みも終わりました。

 

引き続き

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)(D.A.ノーマン、1990[1988])

第4章 何をするかを知る

第5章 誤るのは人の常

をやります。

 

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

 

 

第4章 何をするかを知る

◯デザインはユーザーが(事前の説明なしに)適切な行動をとるための手助けとなりうる。それは主にデザインの中のアフォーダンスと制約による。

 アフォーダンスはそのアイテムで「できること」を、制約は「できないこと」をそれぞれ示唆する。制約は次の4つのタイプに分類できる。

制約の4タイプ

  1. 物理的な制約:物理的に規定されるもの
  2. 意味的な制約:状況や外界への知識に依存するもの*1
  3. 文化的な制約:文化的慣習に基づくもの
  4. 論理的な制約:論理的な推測に基づくもの

 

⇒テキストには「論理的な制約が自然な対応付けを可能にする」と書かれている。これは「論理的に考えれば、当然そうあるべき」という面で直観的な操作を可能にするということだろう。

 

◯加えて可視性とフィードバックを考慮に入れることも重要である。

 可視性とフィードバックを確保することにより、ユーザーは「(自分が)今何をしているか」「次に何をすべきか」という実行におけるへだたり、そして「目的はちゃんと達成できたか」という評価におけるへだたりを埋めることができる。

 

◯フィードバックには視覚以外にも聴覚(音)などを用いることが考えられる。

 →しかし「意味のある音」を届けられるように注意しなければならない。

 音のフィードバックとして、「電話の(送話側に聞こえる)コール音」「鍵を閉めた時のカチャという音」「誤った操作をした時の警告音」などが挙げられる。

 これらは視覚的に表現しきれないものをユーザーに伝えるために有効ではあるが、一般的に音は視覚に比べてその意味内容が曖昧である。特に人工的な音は恣意的な対応づけがされがちであり、フィードバックの解釈を難しくする(そして活かせない)原因となりうる。

 

 

第5章 誤るのは人の常

◯人がおかすエラーは大きく「スリップ(slip)」と「ミステーク(mistake)」に分けることができる。*2

  • スリップ:(特に自動化された行動における)実行中の「うっかり」
  • ミステーク:目標設定の段階におけるそもそもの「考え違い」

 

◯スリップは「発見は簡単でも特定が難しい」という特徴を持つ。そのため適切なフィードバックによる検証可能性をデザインに組み込むことが求められる。

 スリップには次の6つの分類がある。

 しかしいずれの場合もなんらかのフィードバックがあるまで自らの行動に気づけず、時には「誤りがあったのは確かだがどこで間違えたのかわからない」という状況にもなってしまう。

 デザインにおいては予防だけでなく、発見と修正(やり直しの余地)が行いやすいようにしておく必要が有る。

 スリップの6類型

  1. 乗っ取り型:始まりが似通っている別の行為系列に脱線してしまう
  2. 記述型:「全体的に似ている」行為系列を取り違えてしまう
  3. データ駆動型:外界からの刺激(感覚データ)によって引き起こされた行為系列が現在の行為系列に割り込んでしまう
  4. 連想活性化型:(刺激に対する?)頭の中の連想が誤った行為系列を引き起こしてしまう
  5. 活性化消失型:なにをしようとしていたかを忘れてしまう
  6. モード型:装置の「モード」を勘違いし、誤った操作をしてしまう*3

 

 

◯人の持つ「厳密な論理性よりも経験に基づいた直観的判断を信頼する」性質がミステークの原因である。

 人の思考は、客観的な論理性・合理性に従うというよりも突飛な飛躍やヒューリステックによってなされている。それにより一見関係がないようなものごとの間に新たな関係性を見出したり、一般化したりすることができる。

 この創造性は「誤った一般化・思い込み」と紙一重であり、意識下・無意識下を問わず思考していく中では避けて通ることができないものである。

 

◯デザイナーはエラーを前提としたデザインを行うことによって、これら不可避の問題に対処すべきである。

 人の活動とエラーは切っても切れない関係にある。デザイナーはエラーの存在を無視せず、むしろ「必ず起こるもの」としてその発生を許容するような発想のもとでデザインを行うべきである。

 エラーに備えたデザインの原則4箇条

  1. エラーの原因を理解し、その原因が最も少なくなるようにする
  2. 行為は元に戻すことができるようにする(できない操作はやりにくくする)→undoコマンド
  3. 生じたエラーを発見・訂正しやすいようにする
  4. ユーザーは(エラーを犯しているのではなく)あくまで自らが望むことを実行しようとしているのだと心得る

 

 

【今回の宿題】

  • エラーの分類、特にラブスについて

 

……家事を片付けてから取り掛かったら日付をまたいでしまった(現在時刻0:13)。投稿時刻をちょっとだけずらして5日中にしておこう。ちょっとだけね?

 ノートをとっていたときはかなりガッツリと勉強した気分だったんだけど、まとめてみると案外に短かった。まあ、各章3~4ポイントに収まるように取捨選択しているので、本筋からやや外れた話が多かったということだろう。

 

それでは

 

KnoN(60min)

 

ヒューマンエラー 完訳版

ヒューマンエラー 完訳版

 

 

*1:例:傘は自分より上に差さなければ雨を防げない(=雨具としての用をなさない)。

*2:ジェームズ・リーズンによれば「ラプス(lapse)」を加えた3分類になるようだが、参考文献がすぐに入手できなかったので今回は深入りしない。

*3:これだけなんだか他の5つと毛色が違うような気がする