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KnoNの学び部屋

落ち着きのない大学院生が専攻に関係ない(むしろそっちのけで)学んだコトを記録しておく場所

先行研究を読むとはいかなる営みなのか

◯単発・その他

細かいタスクを消化してたら三連休が終わった。

 

今日は少し趣向を変えて、有斐閣が発行するPR誌「書斎の窓」から

先行研究を読むとはいかなる営みなのか――大学院新入生への1つのアドバイス(上)

先行研究を読むとはいかなる営みなのか――大学院新入生への1つのアドバイス(中)

先行研究を読むとはいかなる営みなのか――大学院新入生への1つのアドバイス(下)

(曽我謙悟、2014)

という記事をテキストにしてまとめてみようと思います。

 


トップページ | 有斐閣

 先行研究を読むとはいかなる営みなのか

◯先行研究を読むのは自分の研究に資するためである。あくまで「書き手」としての視点から読むことが求められる。

 そのために次の3点を意識する。

「書き手」として先行研究を読むための3項目

  1. 何をどの程度読むのか
  2. 個々の文献をいかにして読むのか
  3. 文献間の関係をいかにして読むのか

 

 研究を行う上で「先行研究(文献)を読む」という作業は、重要なパートではあるが全てではない。より本質的な自身の研究、論文の執筆に十分なリソースを投入できるようにするために、なるべく効率よく先行研究の講読は済ませるべきである。

 

◯文献の選択では「価値のあるものを見極める」「相互作用(シナジー)が期待できるように体系立てる」「費やす労力とのバランスをとる」ことが重要である。

 限られたリソースで最大限の効果を得るために、最も避けなければならないのは「読むに値しない文献に時間と労力を費やす」ことである。

 著者(曽我)は具体的に次のような手順をとることでそれを避けることができると提案している。

文献の読み方

  1. 読むべき文献をリストアップする
  2. ある程度のまとまりとして抜き出し、テーマを持って読む順序を決める
  3. 文献の重要性に応じて読み方を変える

 

 まず読むべき文献のリストを作る。リストは常に更新し、より自分の関心分野に対する精度を高めていく。その作り方には「芋づる方式」「網羅方式」「検索方式」などがあるが、基本的には「芋づる方式(=ある文献の中の参考文献を辿っていく)」をメインに「検索方式」を補完的に用いるのが良いと思われる。

 次にそのリストの中から具体的に読む文献を選び出すが、 単独ではなくなんらかのテーマをもたせたまとまりとして選ぶ。文献間の関係性を理解することで全体像をつかむことができるようになる。

 実際の講読では読み方にメリハリをつける。重要度別に「全体の要旨のみ」「各章の要旨も」「本文すべて」「注まで丸々」というように分け、読む前に判断しておく。

 

◯講読に際しては「スタンスの明確化」「文章レベル・構成部品レベルでの検討」「読後の吟味」を行うことが要点となる。

スタンスの明確化

 文献を「科学の成果として読むか」か「作品として読む」かは大きな問題である。

  • 科学の成果として→最新の成果を知るのが目的、再現性は必須
  • 作品として→流れの中の位置付けを知る、読み手の数だけ解釈がある

→結局は学問のあり方や研究の独自性がどこにあるかによる。

 

文章レベルでの検討

 文章のレベルでは次のような点に注意しながら読む。

  • 文章そのもの→伝わりやすい文章になっているか。考えをはっきりと言語化できているか。
  • 図表→分析を導くのに適切な表現がなされているか。どれだけの情報を凝縮できているか。
  • →根拠の提示は十分か。本文はどういう広がりをもっているか。
  • 索引→基本以外にどのような「補助線」を読み取ることができるか。

 

構成要素レベルでの検討

 構成要素のレベル(章、節)では次のような点に注意しながら読む。

  • タイトル・導入→「文献の意義(=読む価値)」を説明できているか。
  • 導入その2→議論の道筋を示し、読者を本文へと誘導できているか。
  • 先行研究の検討→先行研究に対する本研究の位置付けを示せているか。
  • 分析・記述→分析や記述がいかにしてなされているか*1
  • 結論→「議論の要旨」「議論の限界」「今後の展望」が明確に書かれているか。

 

読後の吟味

 読みっぱなしではなく、十分な吟味する時間をとることで文献の読みを数倍深くすることができる。その際文献やメモを読み返さず、頭の中だけで検討を行うことで自分の理解を確かめることができる。

→「自分のもの」といえる文献を増やすことが文献購読の目的である。

  • 議論の骨格の再構成→ようするに何を議論していたのか
  • 文献執筆に必要とされた作業→自分の執筆にどのようなプロセス・時間が必要になりそうか
  • 全体の評価→学問分野におけるその研究の位置付け(広さ・深さ・新しさ)はどうであったか

 

◯文献をバラバラに読むのではなく、複数の文献を相互に関係付けていくことよにって研究分野の全体像が見えてくるようになる。それにより自分の研究をどこに位置づけるべきかもわかるようになる。

 文献を単独に読んでも「先行研究を読んだ」ことにはならない。複数の文献を結びつけることによって描き出される「関係性の全体像」を把握できるようになることこそ「先行研究を読む」という営みである。

→ミクロの読解からマクロの読解に拡張していかなければならない。

 

 マクロの読解は「種々の研究を1つ1つ配置していくことにより、浮かび上がる地形を地図として描く」イメージとして捉えることができる。そうした地形の描き方は一通りではなく、配置の切り口・関係性の整理の仕方によって様々な姿を見せうる。

 描かれた地形を考察し、研究のまとまりとして厚いところ/薄いところ、厚さ/薄さの理由、研究群の中心などを考えていくことにより、その地図の中に自分の研究を配置した時の位置付けを理解することができる。

→「ニッチ(隙間)を自ら見出していく」ことによって、価値のある研究を行えるようになる。

 

 

【今回の三行まとめ】

  • 「学問分野の地図」を描き、そこに自分を位置づけられるようになることが「先行研究を読むという営み」の目的
  • いたずらに量を読むのではなく、しっかりと理解した「使える文献」を確実に増やしていくのが重要
  • 限られたリソースの中で効率よく吸収していくためには幾つかのコツがある

 

【今回の宿題】

  • 自分の関心領域で「学問分野の地図」を描く

 

……ちょっと長くなりすぎたか。

 先月あたりに見かけて、ずっとしっかりと読んでまとめたいと思っていた。元のHPでは通しでは読みづらくなってるし。

 原文にもあるけど、なかなかこういうことをはっきりとした言葉で教えてもらえる機会はない。うちの研究室では基礎文献のリストを渡されて「必要そうなの自分で読んでおいて」で終わりだった。

 なんだかんだで「学問分野の地図」を描くという方法には自分でも行き着いて、口述試験の発表の時なんかにはマトリクスにプロットしたのを用意したけど、それもいい加減古くなってしまったのでアップデートしないと。

 

 拾い読みしやすいように見出しの色を変えてみたんですけど、どうですかね? 書いてる時にはチラチラしてむしろ鬱陶しかったんですが苦笑。

 

それでは

 

KnoN(120min)

 

行政学 (有斐閣アルマ)

行政学 (有斐閣アルマ)

 

 

*1:著者は『因を推論する』(久米郁男、2013)を参考文献として挙げている。