「らしい」建築批判 その2
カテゴリのナンバリングをミスっていたのでこっそり直しちゃいました。
引き続き
の
4 革命の終焉
5 「社会性」からの撤退
6 ポスト・モダニズムからネオ・モダニズムへ
をやります。
第二部 建築界における「社会性」からの撤退
このスノビズム、あるいは消費社会の本質を問うためには、フランス革命以来の近代の革命の歴史を紐解く必要がある。
第二部ではより一般的なレベルで近代以後の社会情勢について理論を展開していく*1。
1789年のフランス革命勃発以来、1968年*2の「政治の季節の終わり」に至るまで、近代の社会の根底には常に革命の精神があった。
その中で建築界においては1914年にル・コルビュジエが「ドミノ・システム*3」を提唱し、工業化社会における新しい住宅のあり方を追求した。
フランス革命は、建築家の社会的役割を根本的に変える。大革命以前の建築家が、封建的・絶対主義的体制を動かす主要な静止的権力を建築的に表現する役割を担っていたとすれば、大革命後の建築家は、民主的市民社会の必要を自充足することを自らの最大の課題とした。
(ヴィットリオ・M・ラムプニャーニ『現代建築の潮流』)
しかしヨーロッパにおける「社会革命としてのモダニズム」はファシズムによって抑圧され、ドイツでモダニズムの拠点となったバウハウスの主要なメンバーは1930年代の後半にはアメリカへの亡命を余儀なくされる*4。
ところがフィリップ・ジョンソンのお膳立てによって輸入された革命モダニズムは、消費社会化が進行するアメリカにおいて「美学としての抽象性」(=インターナショナル・スタイル)として受容されてしまった。
パイオニア・モダニズム、つまりモダニズム第一期は、西側資本主義のアメリカのモダニズム第二期において、当初のヨーロッパでの政治性をすっかりと消去されて、インターナショナル・スタイルという、「美学としての抽象性」へ見事に変容する。
建築はその後「ポスト・モダニズム」「ネオ・モダニズム」と変遷していくが、どちらも過去の様式のリバイバル、「美学としての◯◯」の範疇から脱するには至っておらず、本質的には何も変わっていないのである。
1914~ | 1933~ | 1966~ | 1995~ |
革命モダニズム | インターナショナル・スタイル | ポスト・モダニズム | ネオ・モダニズム |
欧州 | 米国 | 米国 | 米国 |
ル・コルビュジエ、グロピウスなど | フィリップ・ジョンソン | ロバート・ヴェンチューリ | - |
政治としての抽象性、社会革命の原理 | 美学としての抽象性 | 美学としての装飾性 | 美学としての抽象性 |
【今回の三行まとめ】
- 1968年まで、近代社会の根底には常に「革命の精神」があった。
- コルビュジエなどの「革命」モダニズムは工業化社会における新しい建築のあり方を提案するという政治的・社会的な狙いを持っていた。
- 現代にもモダニズム的なものは受け継がれているが、それは消費社会における「美学としての抽象性/装飾性」として矮小化されてしまっている。
【今回の宿題】
- より一般的な「近代」の議論の理解
- はてなブログにおける表組みの簡単なやり方
……一番苦労したのが表をどうやって表示させればいいかっていうね……。
「はてな記法」を使えば楽に出せるらしいんですが、普段このブログは「見たままモード」で書いていいて、記法を切り替えると編集中の内容が全部消えてしまう、という残念な仕様になっています。
仕方ないからちまちまとHTMLのタグを入力したよ!こういうのにはなれてないんだよ!
見づらかったらゴメンなさい。
それでは
KnoN
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*1:ただし詳しい理論は丁寧に追っていくと長くなりすぎる&専門外であるために理解が不十分、ということでカット。本記事では建築での現れ方にのみ限定します。
*2:この年には世界各地で同時多発的に歴史の節目となるような出来事が起こった。そのため近代を語る上では避けて通れないものになっている。時系列順にざっと挙げていくだけでも次のようなことがあった。
1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景(小熊英二、2009)
*3:鉄筋コンクリートの水平スラブ(床)と最小限の柱、昇降のための階段を構成要素とする住宅の建設方法のモデル。「Dom-ino」はラテン語で家を意味する「Domus」と革新性を意味する「Innovatio」からのコルビュジエの造語、らしい。
*4:ミース・ファン・デル・ローエ、モホリ=ナジ・ラースロー、ヴァルター・グロピウスなど。
必ずしも直接アメリカに亡命したわけではないが、最終的にはそこに行き着いている。