KnoNの学び部屋

大学に8年在籍した後無事に就職した会社員が何かやるところ。

誰のためのデザイン? その5(終)

やることとやりたいことが多すぎて。

頭の処理能力が追いついてませんができるとこから片付けていきます。

 

引き続き

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)(D.A.ノーマン、1990[1988])

第7章 ユーザー中心のデザイン

をやります。

実質的に全体のまとめ。

 

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

 

 

第7章 ユーザー中心のデザイン

◯ユーザーの視点に立ち「何をしたらいいか」「何が起きているか」をわかるようなデザインを目指すべきである。そのためには次の7つの原則を心得ると良い。

ユーザー中心のデザインの7原則

  1. 外界の情報と内部の知識の両方を利用する
  2. 作業の構造を単純化する
  3. 対象を可視化し、実行/評価におけるへだたりを埋めるようにする
  4. 正しい(=自然な?)対応づけがなされるようにする
  5. 制約の力を活用する
  6. エラーを前提とし、それに備える
  7. 以上全てがうまくいかない時には、標準化を行う

 

1. 外界の情報と内部の知識の両方を利用する(→第1章、第3章)

 デザイナーとユーザー、(プロダクトの内包する)システムそのものが持つ「3つの概念モデル」をいかに近づけていくかがデザインにおける大きな課題である。

  • デザインモデル:デザイナーが実現しようとしている概念モデル
  • システムイメージ:実際に現れている(あるいはそこからユーザーが解釈する)イメージ
  • ユーザーモデル:ユーザーがシステムを理解するために構築した概念モデル

 ユーザーがあらかじめ持つ内的な知識に、システムそのものから読み取れる外的な情報を組み合わせて適切なシステムイメージを提示することによって、ユーザーモデルとデザインモデルを一致させていく。

2. 作業の構造を単純化する(→なし)

 新しい技術を導入することによって従来の作業を単純化し、それによりユーザーの負担を減らすことができるようになる。それには大きく4つのアプローチが考えられる。

  • 作業自体はそのままで、ユーザーにメンタルエイド(思考・記憶上の手助け)を提供する
  • 状況を可視化しフィードバックやコントローラビリティを高める
  • 作業そのものを自動化する
  • 作業の根本的な質を変える

3. 対象を可視化し、実行/評価におけるへだたりを埋めるようにする(→第2章)

 人は自らの限定的な知覚に基づいて行動しがちである。
 ユーザーが(その意図を達成するために)どのような行為の選択肢があるか、その行為により意図は達成されたのかどうかがわかるようにすることが大切である。

  • 実行のへだたり:ユーザーがやりたいことが、実際にできるか
  • 評価のへだたり:ユーザーの目的が、実際に達成できたかを確認できるか

 

4. 正しい(=自然な?)対応づけがなされるようにする(→全体)

 ユーザーが以下のような項目を適切に対応づけられるように、自然な対応づけを追求するべきである。

  • ユーザーの意図と実行可能な行為(→実行のへだたり
  • 行為とその影響(→フィードバック
  • 内部状態と読み取れる情報(→システムイメージ
  • 読み取れる情報とユーザーの意図(→評価のへだたり

5. 制約の力を活用する(→第4章)

 「できないこと」を明確にすることにより、ユーザーがその場においてすべき判断を「狭く・浅い」ものにすることができる。

 制約は次の4種に分けることができる。

  • 物理的な制約:物理的に規定されるもの
  • 意味的な制約:状況や外界への知識に依存するもの
  • 文化的な制約:文化的慣習に基づくもの
  • 論理的な制約:論理的な推測に基づくもの

 

6. エラーを前提とし、それに備える(→第2章、第5章)

 人は必ずエラーを犯す。デザイナーはそのことを念頭に置いた上で「エラーを前提としたデザイン」を行わなければならない。

  • エラーの原因を理解し、その原因が最も少なくなるようにする
  • 行為は元に戻すことができるようにする(できない操作はやりにくくする)
  • 生じたエラーを発見・訂正しやすいようにする
  • ユーザーは(エラーを犯しているのではなく)あくまで自らが望むことを実行しようとしているのだと心得る

 

7. 以上全てがうまくいかない時には、標準化を行う

 どうしても恣意的な対応づけをせざるを得なかったり、制約などを利用した「知識の外部化」ができなかった場合には、最終的な手段として標準化という手段がある。

 対応の恣意性を人工的に統一することにより、一度の学習(=宣言的な知識の獲得) で複数の状況に対処できるようになる。これはユーザーの負担を軽減することにつながる。

 しかし標準/規格を制定しようとするときには、そのタイミングに注意しなければならない。早すぎればまだ関連する技術が十分に洗練されておらず、不合理な標準化となりやすい。遅すぎれば複数デファクト・スタンダード(事実上の標準)が対立し、統合を非常に難しくする*1

 

 

◯時には「あえて使いにくいようにする」デザインが求められる場合もある。

 子供が勝手に外に出ると危険な保育施設や、エラーの結果が重大な損失を招きかねない工事現場での作業などは、ある程度の「使いにくさ」が必要となる。デザインに求められる内容が異なるからだ。

 しかしその場合でもデザインの原則を知ることは役に立つ。

  • 完全に難しくしてはならないから:最も重要な判断の局面においてはハードルを高めておく必要があるが、その前後のプロセスは(セオリー通りに)使いやすいほうが良い
  • 「どうすれば難しくできるか」を知ることができるか:使いやすさの原則の裏返しを適用すれば良い

 

◯デザインされた道具(プロダクト)は行為だけでなく、思考のあり方にも影響を与えうる。

 道具(プロダクト)はアフォーダンスと制約により「次に何ができるか」を示唆する。これはより大きいレベルにおいても人の思考を緩やかに規定しうる。

 

 

【今回の宿題】

  • 「作業の構造の単純化」の詳細

 

……議論の構造が入り組んでいたり(レベルが異なる話を並べている)、似たような話を繰り返すたびに細部の説明が異なっていたりと多少ひっかかるところもありましたが、大意としてはぶれずにわかりやすい話でした。

 「3つの概念モデル」の話などは、まさに同じことをターミナル駅をめぐるメンタルマップとして議論したこともあり、「デザインというものは何をすべきか」という点がかなり整理できたのではないでしょうか。

 もうちょっと自分の中でスパークして思考が発展してくれるんじゃないかと期待していたのですが、そちらはどうやら不発のよう。気を取り直して、次はパースの「記号学」あたりに手を出してみようかと思っています。

 

それでは

 

KnoN

 

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