2月の読書記録
もしくはKnoNによるクリスティ語り。
「まとめ」にするつもりだったけど、まとめるほどブログ上で活動してなかったので読書記録の方で。
<集中読書期間>
- 談話と対話 → 完結
- インタラクションの理解とデザイン → 完結
終わってみれば全然「集中」じゃなかった読書期間。とりあえず3冊で打ち止め。
「コミュニケーションについて計算機科学的なアプローチの基礎を固める」というのが狙いでしたが、果たして達成できたかどうか。
現在は先生のアドバイスを受けて、もっと具体的な事例を分析するところからやっているのでちょっと離れたところに来ています。そのうち役立ってくれると信じよう。
<小説>
主人公が成長しない物語。
最近はずっとクリスティの推理小説読んでます。大半は再読。
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オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)(アガサ・クリスティ、以下省略)
→自分の中のオールタイムベストの一つ。構成が美しい、豪華列車の車内描写が魅力的、多種多様な登場人物たちとその物語上の必然性、など褒めれば切りがない。幼少時に読んで以来のお気に入り。 -
アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
→一般への知名度はやや劣るかもしれないが、推理小説業界へのメタ的な驚きがあった作品。何度も読み返すのが楽しい。 -
スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
→名探偵ポアロの出世作。なかなか侮れない織り込んだ構造をしている。一度読んだはずだが筋を忘れていて、最後のどんでん返しに改めて驚かされた。 -
青列車の秘密 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
→初読。何年も前に買ったはいいが読まずに積んでいた。イギリス・ロンドンからパリを経由して南仏ニースにいたる青列車(ブルー・トレイン)、その車内での殺人事件。
雪で立ち往生する『オリエント急行』とは一転、南仏のリゾート地の空気を存分に感じられる。 -
ナイルに死す (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
→初読。子供の頃に読んだ本の中で言及されており、ずっと気になってはいたが厚めなこともあり中々手が出なかった。冒頭で「できればゆっくり味わって読んでください」と書いてあったのもある。
いざ手にしてみればナイルを南下するエジプトの旅情が見事に描写されており、特に事件が起こる中盤までは旅行小説としても素晴らしい*1。
謎解きを楽しみにしている読者には前振りが長すぎると感じるかもしれないが、事件自体も複数の思惑が複雑に絡み合ったまさにクリスティの真骨頂とも言えるべきものであり、期待に応えてくれるだろう。 -
そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
→おそらくクリスティ作品の中でもっとも知名度が高いであろう代表作。ポアロは出てこない。
クリスティ円熟期の筆はむんむんと溢れる妖しい魅力がある。「推理小説」というよりは、内と外から登場人物たちを蝕んでいく恐怖、サスペンス的な側面が強い。
作者の最高傑作にあげる人も多いが、ポアロシリーズの「自然体の展開」に比べてやや作り込みが過ぎると感じる点、思い出補正も合わせて『オリエント急行』を個人的に推すのであります。
最近小説などストーリーのある表現に関しては、「その主人公の成長の回路は倫理的なのか」「ナルシシズム的な回路に陥っていないか」などの点ばかりが気になってしまい、なかなか感情移入できない、あるいは素直に楽しめないということが続いていた*2。
その点推理小説、特にクラシカルな推理小説は「主人公は問題を解決するだけでそれによって影響を受けない」ので安心してみていられるという側面がある。
他の「ストーリー性を失った物語」の例と合わせて、なにか今までとは違った方向性の小説が書けないかと思っていたりもする次第です。
<実用>
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憂鬱でなければ、仕事じゃない (講談社+α文庫)(見城徹、2013[2011])
→日本テレビの「~世界に誇る50人の日本人~成功の遺伝史」という番組をたまたま見ていた時に、イモトアヤコが取り上げていた。なんとなく気になり、Kindleで購入*3。
見城が自身の格言を掲げ、それについて数ページ程度で説明し、共著者の藤田晋(サイバーエージェント社長)がコメントする、という形式で進んでいく。
内容は賛成できるものもあり、納得しかねるものもあり。類似書と比べて飛び抜けていいということも感じなかったが、題名にもなっている部分は心に来た。
文章は読みやすく分量もさほどではないので、ちょっとしたときに読んでみてもいいかもしれない。
<アニメ>
ついでだからおまけ。週に4本もアニメを見てるのは非常に珍しい。
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蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- DC(岸誠二、2015)
→漫画原作、2013年にTVシリーズで放送したものの再構成+新規ストーリーで全二部作の前半。
映像面は素晴らしい。文芸面は悩ましい。
ストーリーがあまりにも典型的な「レイプ・ファンタジィ」構造を取っているように見えるため、それを後半どう処理していくか、逆に気になってしょうがない。 -
ガンダムビルドファイターズトライ(綿田慎也、2014)
→2013年のアニメ「ガンダムビルドファイターズ」の続編。正統派の「ガンダム」ではなく、「ガンプラ」というおもちゃを使って対戦するというホビーアニメ。
無印は「少年の友情と成長の物語」としてだけでなく、ガンダムという文化を「メタ」化しているという面でも面白かった。
今作も水準以上ではあるのだが、準備期間が短かったせいかやや詰めが甘い印象を受ける。
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アイドルマスターシンデレラガールズ(高雄統子、2015)
→日本で1,2を争うくらい荒稼ぎしているであろうソーシャルゲームのアニメ化。元の原作「アイドルマスター」はバンダイナムコが出したアーケードゲーム。高校生の頃にちょこっとだけ見かけたことがある。
2011年のアニメ「アイドルマスター」もDVDを借りて見たことがあるが、割に「アイドル」として硬派な作りで印象が良かった。舞台が変わった今作も、多少気になるところはあるもののしっかりとした作品としてできていると思う。 -
ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース(津田尚克、2014)
→少年漫画『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの第3部のアニメ化、分割4クールの後半。
正直「シンデレラガールズ」と時間が続いている、弟が見ているのでついでに、というのが見ている理由なのだが、緩急が巧みでジェットコースターのような楽しさがあるし、その中で表現されるケレン味が素晴らしい。 -
蒼穹のファフナー EXODUS(羽原信義、2015)
→2004年のアニメ「蒼穹のファフナー」の、実に10年越しの続編(間に劇場版はあったけど)。中学生の時に初めてみた深夜アニメでもある。
「対話」「存在」ということを丁寧に描いており、キャラクターの「死」が非常に重く描かれて緊迫感がある。
「ビルドファイターズ」や「シンデレラガールズ」は全体としてある種の「お約束」な展開から逸脱しないが、「EXODUS」は本当の意味で次に何が起こるかわからない、毎週が楽しみでありながら怖いという魅力を持つ。
CGによるアクションが素晴らしいだけでなく、非常に緻密に描かれた背景は一見の価値あり。
……おまけのボリューム多すぎじゃない?
3週間も空いてしまいました。その間遊んでいたわけではなく、いろいろやってはいたのですが、現在進行形のこともあるのでここでは伏せさせていただきます。
とりあえず今は「具体的な事例の分析」のヒントを先生から頂き、それに取り組んでいるところ。そのうちこちらでも記事にするかもしれません。
それでは
KnoN(--min)
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(新しい版・訳が出ているのですがカバー絵が気に入らないのでここでは両方旧版で)
*1:ちょうど1月からアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』が放送されているのも情景を思い描くのに一役買っている気がする
*2:宇野常寛『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』なんかの副作用。
*3:瞬間的な売り上げランキングでは結構上位に入っていた記憶が有る。なんだかんだテレビの力ってすごい。