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KnoNの学び部屋

落ち着きのない大学院生が専攻に関係ない(むしろそっちのけで)学んだコトを記録しておく場所

談話と対話 その4

月曜日にしか記事が書けない。

 

引き続き

談話と対話 (言語と計算)(石崎雅人ほか、2001)

第7章 相互信念と対話

をやります。

 

第5章 談話構造と照応

第6章 対話の構造

は内容が自分の関心とやや離れていたので、目は通しましたが記事としてはまとめません。

末尾に節見出しを付記しますので、関心がある方は直接テキストに当たってください。

 

談話と対話 (言語と計算)

談話と対話 (言語と計算)

 

 

第7章 相互信念と対話 

◯ここまで対話構造を「複数の主体が従事する何らかの共同活動の一部」として議論を進めてきたが。しかし共同信念の獲得過程を考えると、むしろ対話それ自体を共同活動の一種としてとらえる方が適切である。

 複数の主体が互いに調整しながら何らかの行為を行うとき(共同行為;joint action)、そこには二つの要件が必要となる。

  1. それぞれの主体は、自らの担当部分を行う意図を持っている
  2. それぞれの主体は、自らの行為が全体の一部であるという信念を持っている

→各々が勝手にやった行為が結果的に結びついたとしても、それは共同行為とは言わない。

 

 共同活動(joint activity)は共同行為を基にしてなりたっている。

→そのためには、(1.2.の要件を含む)共同行為遂行に必要な知識や信念を(しばしば言語による)コミュニケーションによって獲得しなければならない。

→ここまでの章での議論では無視してきたが、そもそも言語によるコミュニケーションが成立するにはどこまでの領域知識・規約的知識が共有されているかを知らなければならない。*1

→このような前提となる知識・信念の共有は、主体間の共同的なすり合わせによってなされる。

→→「対話それ自体が共同活動の一種」である。

……対話における発話の産出・理解は、他の談話参加者との間で共有された知識・信念に基づく共同行為であり、同時に、以降の発話の産出・理解に必要な知識・信念を共有に導くような行為なのである。

 

◯共同活動への従事には主体間で共有された知識・信念(共同信念)があることが必要である。

 相互信念には幾つかの定義がある。*2

  • 反復的定義:主体の中に「無限の入れ子」構造の信念を想定する
  • 反射的定義:自己言及的な命題qを用いた定義(?)
  • 共有基礎定義:命題pの共有を基礎(basis)bの共有により正当化する定義

⇒ここ、よくわからん。下二つにより「無限の入れ子」問題を回避できるのはわかった。

 

 相互信念には以下の2種類がある。

  • 共同体的な相互信念:同じ共同体の成員が、そこでの常識として知っていると思われるようなことがら。しかしその獲得過程は不明瞭である。
    ⇒広い意味での文化コード
  • 私的な相互信念:限定的な主体の間で、共同知覚体験と共同行為によって獲得されることがら。言語による獲得にはしばしば複雑な調整過程を伴う。
    ⇒個人的なコンテクスト

 

◯クラークは相互信念の獲得や蓄積を「それ自体が主体間での調整を必要とする」ものであるととらえ、基盤化と貢献の概念によってそのプロセスを説明した。この過程は貢献グラフと呼ばれる構造で表せる。

 「対話の進行」と「相互信念の獲得・更新」は互いに影響を及ぼしあいながら展開していく。

 クラークは「共同行為に従事する主体たちは、当面の目標に十分な範囲で、それ(共同行為?)に成功したという相互信念を形成しようとする」という原則の下、そのような相互信念を形成する行いを基盤化(grounding)と定義している。

 

 (共有基礎の形成のために)聞き手によって正しく理解された発話のことを、談話への貢献(contribution)と呼ぶ。貢献は提示(presentation)と受理(acception)の2つの段階からなる。

貢献 = 提示 + 受理

  • 提示:AがBに発話uを提示する。Aは「Bからある証拠eが示されれば、uによって自分が意味したことがBによって理解されたと信じてて良い」という過程に基づいている。
  • 受理:uによってAが意味したことを、理解したという証拠e'を示すことでBがuを受理する。Bは「いったんe'がAによって記録されれば、自分が理解したということをAも信じるようになる」という過程に基づいている。 

⇒ここでeとe'を区別している理由がいまいちはっきりしない。

 「Aが観測した証拠がe」「Bが示そうとした証拠がe'」ということはわかるが、以後の議論で区別が利用されていない。

 

 理解の証拠eとしては次のようなものがある。

  • 主張:「はい」「うん」などのあいづちを打つ
  • 前提:要求された応答を産出したり、関連した次のターンを開始したりする
  • 表示:特定の方の応答を産出することで、Aの発話をどのように理解したかを示す
  • 例示:Aの発話の全体または一部を言い換えたり、復唱したり、ジェスチャーで示す

 

 貢献Cは提示Prと受理Acからなり、受理にはしばしば複数の発話のターンを必要とする。またある貢献に対する受理はそれ自体が新たな貢献への提示でもある。

 このような過程は貢献グラフというグラフ構造によって表すことができる。

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図1:貢献グラフの例、p188

 

◯トラウムはクラークの理論を修正し、主体の計算理論として基盤化アクトと遷移ネットワークからなるモデルを提案した。

 クラークの理論は、「主体がどのような計算を行っているか」というモデルとしては次のような点で不十分であった。

  • 貢献グラフはあくまで基盤化の過程を「観察者の立場から事後的に振り返って表したもの」であり、各主体における動的な計算過程の直接のモデル化ではない
    →グラフ上の単位を動的な計算過程に対応させることができない
  • 対話の各時点において現在の貢献の基盤化がどの段階にあるかということが明示されていない

 

 トラウムは「貢献」の概念を「談話ユニット」に整理し直すことによって、動的な計算に対応したモデルを導入した。

  • 談話ユニット:貢献に変わる概念。共同信念形成のため正しく理解された一連の発話。提示・受理の2択ではなく、7種の基盤化アクトの列からなる。
  • 基盤化アクト:対話中の発話を何らかの基準によって分割した基本単位に付与するラベル。「開始(Initiate)」「続行(Continue)」「認定(Ack)」「修復(Repair)」「修復要求(ReqRepair)」「認定要求(ReqAck)」「取消(Cancel)」の7種。
  • 遷移ネットワーク:主体のその時点での内部状態と、現在の発話単位の基盤化アクトが次の状態を決定すると仮定して主体の計算過程をモデル化し、それを図示したもの。

f:id:arcadia_1159:20150209163850p:plain

図2:遷移ネットワークの例、p206

開始状態Sから状態1を経て、最終状態Fまたは無効状態Dへと遷移する。

※矢印が発話単位とそれにつけられたラベル(基盤化アクト)。上添字は主体者、開始者Iと受け手R。

 

 

【今回の宿題】

  • 相互信念の定義。特に反射的定義。
  • 「貢献」概念の説明におけるeとe'の区別。

 

……理解できているような、できていないような。相変わらず記号論理的なところの議論は上滑りする。

 次回は巻末の解説を読んで全体のまとめをして終わります。

 

それでは

 

KnoN(120min)

 

Using Language

Using Language

 

Risk-taking and recovery in task-oriented dialogue(Carletta, J. 1992)

 

おまけ

第5章 談話構造と照応

5.1 談話構造とは

5.2 意図にもとづく談話構造

5.3 談話構造の認識

5.4 焦点と照応

5.5 中心化理論

 

第6章 対話の構造

6.1 相互行為にもとづく対話の構造

6.2 隣接ペアと話者交代

6.3 発話交換構造

6.4 中位の構造

6.5 対極構造 

 

*1:ようするに「業界用語」で話しかけられても門外漢には何のことかさっぱり、ということである。

*2:第3章でも触れた。ここでの記事では省略したけど。

談話と対話 その2 - KnoNの学び部屋