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KnoNの学び部屋

落ち着きのない大学院生が専攻に関係ない(むしろそっちのけで)学んだコトを記録しておく場所

現代日本のコミュニケーション研究 その1

丸一週間放置してましたが、今日からまた頑張ります。

できることからこつこつと。

 

今回からは

現代日本のコミュニケーション研究(日本コミュニケーション学会、2011)

をやります。

 

学会の40周年記念として日本の「コミュニケーション学」の全体を概観する内容ですが、多岐にわたっているので各部ごとに自分の関心が深い分野だけにしぼってまとめていきます。

 

まずは

第Ⅰ部 対人コミュニケーション

から。

 

現代日本のコミュニケーション研究

現代日本のコミュニケーション研究

 

 

 第1章 対人コミュニケーションの特徴と研究概要

 社会生活を送るために必要不可欠な人間による活動・営みのほとんど全ては、対人コミュニケーションであるといっても過言ではない。

→主体である人間を強調してヒューマン・コミュニケーション(human communication)、「私とあなた」のペア(dyad)でなされる点からダイアディック・コミュニケーション(dyadic communication)という用語も使われる。

 

目的:意味の共有という形での相互理解、人間関係とその発展(relationship development)

対象:言語・非言語のシンボルを用いた相互作用とプロセス

 

 

 対人コミュニケーションが研究領域として認知されるようになったのは1960年代に入ってからと比較的新しい。心理学、社会学などの領域から枝分かれする形で成立した。

→1990年代までの発展の歴史についてはKnapp,Albada & Miller (2002)にまとめられている。

 

 2000年代は対人コミュニケーション研究の成熟期といえる。

 一方で自らの研究分野に対する批判的な見方や、パラダイム確立の必要性も活発に議論されるようになり、次の3つの基本的な流れ(メタ理論的仮定)に整理されることとなった。*1

  • ポスト実証主義=データ重視、仮説検証を元に客観的事実の解明を目的とする
  • 解釈主義的視座複数ある主観的現実の差異と間主観的現実を共有するプロセスを見る
  • 批判主義的視座=特定のイデオロギーを反映する言説や、マイノリティのアイデンティティ形成のプロセスを批評する*2

 

 さらに全体的な傾向として、単なる実態調査からグラウンデッド・セオリー・アプローチ(grounded theory approach / GTA)、つまり蓄積されたデータをつかった理論の検証と厳密化を目指す研究へと移行しつつある。

 

 2000年代の新たな展開として、怒りや傷心といった負の感情、あるいはいじめ、家庭内暴力、不倫関係など暗黒地帯(dark side)と呼ばれるコミュニケーションも研究対象として含まれるようになった。

 

 将来の展望と課題として次の5点が挙げられる。

課題1:メタ理論的仮定の統合

 3つに整理されたメタ理論的仮定だが、1990~2005の公刊論文の内訳はほとんどがポスト実証主義的なものに偏っている。

 複数の視点による多面的な研究の増加が期待される。

 

課題2:理論ベースの研究の促進

 研究の中心に理論を据え、その根拠を明確にすることで、学問的意義・社会的意義の双方を位置づけることができる。

 

課題3:研究対象の更なる多様化

 技術の発展により、face-to-faceのやりとりが対人コミュニケーションの必要充分条件ではなくなってきている。

 変化しつつあるコミュニケーションの本質に対応した研究が望まれる。

 

課題4:研究活動と教育の連携強化

 対人コミュニケーションは学問領域であると同時に良好な人間関係を気づくために身につけるべき技能(skill)や能力(competence)でもある。

 研究の内容を実践に活用する教育・啓蒙活動への積極的関与が求められる。

 

課題5:文化を超越した対人コミュニケーション研究の推進

 従来コミュニケーション学は欧米(特にアメリカ)を中心にして発展してきたため、欧米的な価値観がデファクト・スタンダードとなってきてしまっていた。しかし文化の文脈によってコミュニケーションの意味づけは異なってくる。

 特に「日本人の研究者による日本人の対人コミュニケーションを日本の文化の特徴に関連づけた独自の理論的枠組での研究」を期待したい。

 

第2章 対人関係の親密化

第3章 自己開示

第4章 自己呈示

省略。

 

第5章 対人コミュニケーション能力

 「対人コミュニケーション能力」と呼ばれるものは、さまざまな学問領域でさまざまな呼称で研究されているが、いずれも類似概念を意味していると考えられる。本章では次のように定義する。

対人コミュニケーション能力

=対人関係を円滑に運用するために必要な、効果的かつ適切なコミュニケーションを実践する能力

 →「認知的コンピテンス」「情動的コンピテンス」「行動的コンピテンス」の3次元からなる*3

  • 認知的コンピテンス=コミュニケーションに置ける情報処理に関連するさまざまな知識、気づき、自覚、意識、情報収集能力、解釈力など
  • 情動的コンピテンス=感情および動機づけレベルの諸能力
  • 行動的コンピテンス=社会的スキルを含む、外顕的行動により観察できる能力

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 対人コミュニーション能力は、研究の焦点によって「特性論的アプローチ」「状況論的アプローチ」「関係性的アプローチ」に分類することが出来る。

  • 特性論的アプローチ=個人に焦点、コンピテンスに関連するパーソナリティ、認知能力や行動スキルをどの程度個人が有するのかを問う
  • 状況論的アプローチ=特定の状況(たとえば医療の現場)においてどのようなコミュニケーションがコンピテントであるのかを探る
  • 関係性的アプローチ=特定の二者の間で交渉され、培われる二者特有の規範やルールを調べる*4

 

 従来の大半の研究は特性論的アプローチを採用し、個人がコンピテントであるかどうかを評定している一方で、状況や相手については追究できていない。

 量的・質的に多方法的な検討を行い、多角的な捉え方をすることが必要である。

 

第6章 対人コミュニーション・トレーニング

省略。

 

 

【今回の三行まとめ】

  • 現在の対人コミュニケーション研究は「ポスト実証主義」「解釈主義的視座」「批判主義的視座」という3つのメタ理論的仮定のもとに行われている。しかし偏りが激しく、多面的な研究が求められる。
  • 対人コミュニーション能力は「認知的コンピテンス」「情動的コンピテンス」「行動的コンピテンス」という3つの次元をもつ能力として捉えることが出来る。
  • 対人コミュニーション能力の研究は「個人」「状況」「関係」などが焦点として考えられるが、これもまた偏りが大きい。

 

【今回の宿題】

  • 1990年代までの発展の歴史
  • それぞれメタ理論仮定の仮定の内容

 

……中盤は社会心理学っぽい内容が多かった。

 自分がやりたいことは「コミュニケーションをしやすい環境を作る・しやすい技術を確立する」ことなので、第5章の内容をより精査すると知りたい情報が得られるかもしれない。

 しかし第6章の「トレーニング」にはあまり心を惹かれなかった。まずは理論面での足場固めが重要だと思っている、ということだろうか。

 

それでは

 

KnoN(90min)

*1:Deetz,2001 ; Baxter & Babbie, 2004

*2:Baxter & Braithwaite, 2008

*3:Spitzberg & Cupach,1989

*4:心理学の「関係性コンピテンス」とは異なるので注意